2011-01-01から1年間の記事一覧

近寄ってくる人々

以前、ホーチミン市のサイゴン川ほとりのベンチで休んでいたら、物売りがひっきりなしに寄ってきて、くつろぐどころではなかった記憶がある。 カトマンズでは、その手の男にしつこく付きまとわれて閉口したことがある。 その根性は認めるが、たとえば、好意…

パンツをめぐる昨今

日々の雑事でめんどうくさいのが、洗濯である。ホテル住まいなので、洗面所で手洗いするのも勝手が悪いし、クリーニングに出せばお金がかかってしょうがない。 ここのホテルは学生が多いので、業務用兼従業員用の洗濯機を借りることができる。最近2台になっ…

静かな休日

「先生、こんにちは」「あ、おまたせ。久しぶりだね」 「お元気ですか」「まあまあかな。キミは?」 「ちょっと風邪をひきました」「え? 大丈夫なの? わざわざ来てくれて」 「ええ、もう治ります。でも、先生から急に電話があってびっくりしました」「ごめ…

母子の事情

中国の一人っ子政策は多くの “小皇帝” を生みだした、といわれている。どうしても子どもを我が儘に育ててしまうらしい。 南京からの帰りの高鉄(中国の新幹線)車内では、発車間際に、僕の席の前方のほうでいい争う声が聞こえた。 見ると、中年女と若い女が…

南京の休日(2)

南京は古都である。明代の城壁も残っているが、日本軍がかなり破壊したらしく、あちこちで修復のあとが見られる。そこには、敵に壊された、ということもちゃんと案内板に記されている。 表通りは、近代化が進む中国の他の大都市同様、大きなビルが建ち並ぶ。…

南京の休日(1)

南京に来ている。上海から250kmぐらい、高速鉄道で1時間あまりだった。 南京といえば、歴史をよく知っている日本人にとっては、トゲのようなひっかかりを感じる地名だろう。観光地として魅力的ではあるが、人によってはあまり足が向かないところかもしれない…

上海の役者

三々五々役者が集まり、いつのまにか演技がはじまる。演目は古い話しだが、役者たちが身に付けている衣装は、古びてはいるがどこか普段着に近い。 そんな演出ではじまるアメリカ映画があった。『ジーザス・クライスト・スーパースター』(ノーマン・ジュイソ…

アイデアの行方

それで、泉州へ行ってどうだったんだ、ということを書いておかなければいけないのだった。 じつは、去年の6月に泉州の学校へ赴任してからしばらくすると、ふと泉州に関連したあるテーマを思いついた。そのときは、人がいないことを確認して、ヒヒと笑いニン…

Intermission

久しぶりの写真特集です。最初の3葉は福州の「三坊七巷」。4葉目が福州の西禅寺からの風景。5葉目は石獅市の万寿塔(1162年完成/高さは20m余)。6葉目は泉州市の東湖公園にて。

万寿塔逍遙

泉州のなかに石獅市という町がある。 中国語のピンイン読みで表記すると「shi shi shi」である。日本語で書けば「ししし」ということになる。地元の人の発音は少し訛りがあって、「すすす」に聞こえる。 だから僕が四声に気をつけて、正しい中国語に聞こえる…

佇んで考えてみた

遊園地の乗り物のように100%近く安全が保証されてはいないが、適度にスリルを楽しむにはうってつけかもしれない。 泉州市内から郊外をむすぶバスの話しである。日本では絶対に味わうことができない荒っぽい運転も、ここまでくれば好きにしてくれ、といいた…

連休地獄

中国は今大型連休中である。いわゆる “十一” と呼ばれている、国慶節休みである。 こんな時期に旅行などに出かけるのは愚の骨頂であり、疲れて散財して消耗して終了である。賢い選択ではなさそうだ。 僕は今泉州にいる。じつは、その賢くない選択をしてしま…

環境問題

部屋の白い壁と天井が高さが、このホテルがわりと古いことを物語っている。必要最小限の調度品はずいぶんくたびれているし、敷かれているじゅうたんは、新品がどんな色だったのか想像もつかない。 シャワーは水漏れが激しく、壊れるのも時間の問題だろう。掃…

上海のカオス

「北京人(北京っ子)は中国人。上海人(上海っ子)は上海人」といういい方があるそうだ。 何となく、東京と大阪の関係に似ていなくもない。大阪人は、日本という枠をこえたアイデンティティを持っているような気がする。 たとえば生粋の大阪弁話者は、とり…

立場が変われば見えるもの

言語をおしえる教師の本分としては、声が大きくはっきりしている、板書の字が正確である(きれいであればなおいいが)、授業にメリハリがある(退屈させない)、いつも機嫌よく接する、などということが即座に思い浮かぶ。 そして何よりも大切なのは、教案を…

カップルの領域

夕方、買い物に出かけた。大通りで信号を待っていたら、同じように待っている一組のカップルが目にとまった。 それほど若くない2人である。男は角刈りで、背も高くがっしりした体型だった。男の身体に窮屈そうに張り付くTシャツからは、筋骨たくましい上半身…

晩ご飯の情景

大きな大学の周辺は食事する場所に困らない。大学を取り巻く通りには、たくさんの店が軒をつらねている。 学生も国際色豊かであり、白人系の若者もけっこう見かける。そのせいもあるのだろうか、ピザなどをあつかう欧風の店もけっこう繁盛している。 ひとり…

得感冒

異文化のギャップに驚いたあの泉州でさえ、しばらく住んでみると、宮崎アニメのキキではないが、この町が好き、と思ったものだ。 ここ上海はどうだろうか。観光に来たことも含めれば、もうずいぶんこの町に滞在している。でも、どうしてなのか、自分はこの町…

非日常的な日常

上海市の虹口区に、魯迅公園という有名な公園がある。木々が生い茂るかなり広い公園である。 口の悪い中国人は、“老人公園” と揶揄するそこには、実際、ひがな一日多くの老人が公園でくつろいでいる。 そんな光景を見ていると、中国も近い将来、一人っ子政策…

お宅のオヤジはオタク?

いいやつなんだけど、会うとそのうちイライラしてしまう。どうもやっぱり相性が悪い。しまいには悪態をついてしまう。そんな友だちが、だれしも一人ふたりいるのではないだろうか。 僕と9月という月は、そんな感じである。どうもこの月は、心身のバランスを…

農家の記憶

遠い記憶の底から、あの太陽光線を十分吸収した、香ばしい稲の匂いがする。 遠い記憶ーーもう遠くなってしまったのだろうか。父や母が稲田で作業し、戦力として子どもたちがかり出される。孫たちは、非日常的な収穫作業を、遊びの延長として家族のまわりで体…

空っぽ頭がシビレる日

宿題なんだっけ? と、若いクラスメートにそっと訊いた。先生の中国語がわからなかったのである。 人間ができている彼らは、哀れむような顔もせず、自分の親父のような男にやさしくおしえてくれた。 どうも僕はクラスの問題児になりそうである。ま、聴解能力…

今さらの学生、とほほ生活

パラダイスかと思っていたら、それは幻想だった。180度立場を換えて学生になったのはいいが、学生とはこんなに忍耐を必要とするものなのか、と感じた。 忍耐、というと不自然かもしれないが、僕にとっては忍耐に近い。 その忍耐を数えあげてみる。まず、椅子…

お茶で一服

「先生、お元気ですか?」「ああ、A君、久しぶりだね。元気だよ」 「先生は、また中国へ来ましたか?」「ああ、そうだよ。夏休みはどうだった?」 「休みなんかありませんよ」「バイト? でも、9月から大学だろ?」 「じつは、考えたんですけど、やっぱり家…

打算と誤算

日本語を使って日本語をおしえる「直接法」の限界を感じて、これは少し中国語を身に付けたほうがよいナ、と思った。 何も中国で勉強しなくても、と幾人の方々にもいわれた。中国がそんなに好きなの? などと皮肉っぽくいわれたこともある。 それらの質問に答…

後ろ髪ならまだあるが

なかなかスイッチが入らないな、と思いながらホテルに着いた。 空港からの地下鉄の喧噪から解放されたと思ったら、粘りつくような通りの蒸し暑さにおそわれた。なだれ込むように部屋に入ると、もう動くのがいやになった。 中国モードのスイッチが入らない理…

奈良で思考停止

数年前、漫才コンビ・笑い飯の、奈良をネタにした漫才で大笑いした記憶がある。漫才師の実力コンテスト『M1グランプリ』で、ついに優勝したのは、去年だったっけ。日本にいなかったので、見逃してしまったが。 最近では、大物漫才師の突然の引退が話題になっ…

ジムは恒例か? 高齢化?

スポーツジムに通っている。休会していたのだが1カ月だけ解いて、週に2〜3回、あれやこれやの運動をしている。 1年ぶりに各種マシーンを使ってみると、すべて1年前の実績を大きく下回っていたのには愕然とした。 やむをえまい。毎日の仕事と生活に追われて、…

自由は不自由か?

中国では、政治と宗教の話しはタブーだった。 学生相手の授業でも、危うく深入りしそうになることもあったが、危険を察知してなのか、学生のほうがあまり乗ってこなかった。 中国政府に対するネガティブな話題はタブーではあるが、日本に対する批判や非難は…

昨今の髪事情

先月、帰国してまず向かった先は床屋だった。空港へ降り立って直行したーー。 ーーなんてことはない。自分の髪を切ることに、そんな緊急性はないのである。床屋へ行ったのは次の日でした。 職場の近所の床屋でいつもカットしてもらっていたのだが、日本のよ…