奈良で思考停止

 数年前、漫才コンビ笑い飯の、奈良をネタにした漫才で大笑いした記憶がある。漫才師の実力コンテスト『M1グランプリ』で、ついに優勝したのは、去年だったっけ。日本にいなかったので、見逃してしまったが。
 最近では、大物漫才師の突然の引退が話題になっているが、お笑いブームもどうやら下降線のようだ。お笑いブームってなんだったのだろうか。
 あまりテレビを見ないのでよくわからないが、お笑い芸人がテレビ界に利用されて消費されてしまった、という印象が強い。たとえば、持ちネタを披露して評価を問うような、ちゃんとした番組があまりなかったような気がする。
 つまり、お笑いブームではなくて、お笑い“芸人”ブームだったのではあるまいか。そういえば、かつてのオートキャンプブームも、その実はオートキャンプ“道具”ブームだったように。
 そうそう、奈良の話しだった。先日、奈良へ行ってきたのであった。
 奈良国立博物館で「天竺へ」と題して、玄奘三蔵の足跡展をやっていたので、はるばる見にいった。玄奘三蔵が好きなの? と問われれば、べつにと答えてしまうが、まあ行きがかりの興味の延長のようなものである。
 諸星大二郎の漫画に『西遊妖猿伝』という、大部の大河作品(未完)がある。「西遊記」の諸星版アレンジ物語であるが、これがめっぽうおもしろいのである。くせ者作家なんで、好き嫌いはあると思うけど。
 しかし、出かけた日があり得ない暑い日で、奈良公園の鹿たちもぐったりしていた。そんな日の館内だから、涼しくてよかったのだが、盆明けの平日だったせいか、中高年が大挙押し寄せて長蛇の列であった。
 ここでも、いきなり日本の高齢社会を垣間見てしまい、玄奘どころか、日本の現状を深く考えてしまった。
 そんなわけで、暑さにやられた空気頭はさらに思考停止してしまい、国宝のやまと絵物語をじっくり鑑賞する気力が湧かず、そそくさと会場を回って、併設の仏像館へ移動したのである。
 ところが、こちらの国宝や重文の仏の集団にすっかり癒されてしまい、気力は回復、仏のような顔をして会場をあとにしたのである。たぶん。(^-^)/
(photo:長浜市内にて。最近写真を撮っていないなぁ)