貧困留学生と障子張り

 我が校の留学生のほとんどはアルバイトに明け暮れている。授業を休んだ日でも、アルバイトには休まず行く連中もいる。何だか本末転倒である。
 アジアの国々からやってくる若者たちは、ほとんどが経済的に苦しい。日本との経済水準がちがうのだからあたりまえだが、日本の留学生受け入れ体制が甘いのも一因である。
 それにつけ込んだ「貧困ビジネス」も横行している。つまり「留学」を隠れ蓑に、実際はお金を稼ぎに来ている連中も少なくないのだ。
 そういう了解のもとに、留学生は紹介業者を通して来日する。当然、業者への「手数料」や学校の授業料が発生するので、留学生にとっては先行投資、または借金からのスタートとなる。
 そのあたりは技能実習生とよく似ているが、実習生ほど窮屈ではなく、また、本来「学生」なので学習環境は担保されている(だから勉強すればいいのだが……)。
 留学生の労働基準は週28時間が限度である。それを守るかぎりでは、生活するだけで精一杯である。とくに、日本語が稚拙な学生は賃金が安く押さえられる。
 うちの学校を見渡せば、カネモーケをたくらむ不届きな学生はいないようだが、さりとて何しに日本へ来たのか首をかしげたくなるような若者もいる。
 今や外国人労働者は100万人を超え、その半数以上を実習生と留学生が占める。どんな仕事をしているかというと、日本人が敬遠する、いわゆる「3K」の仕事がほとんどだ。
 そういう人たちを色眼鏡で見る日本人もいるが、彼らは日本の底辺を支えているといっても過言ではないのである。
 「移民」がどうのこうのという議論があるが、すでに200万人以上の外国人が在住し、100万を超える人たちが働いている現状を見れば、彼らをちゃんと「労働者」として処遇する政策をとらないと、途上国からの若者は現に韓国や台湾に流れていっているし、やがて中国へ向かうようになる。
 それでうちの学生に話しを戻すと、ほとんど全員インドネシアなど暑い国から来ているので、最近は冬の寒さにまいっている。
 とくに、寮として使っているアパートは築ん10年の文化財級のシロモノで、あちこち痛みが激しい。日本人も敬遠する物件をよくもまあ、と学校側に悪態のひとつもつきたくなるような建物だ。
 外から見ると破れ障子が目立ち、どう見ても廃屋にしか見えず、それだけでも何とかできないものかと思っていた。
 案の定、寒くなってきたら窓からの隙間風を学生は訴え出したので、冬休みに入ったのを機に、全室ぼくが障子張りをすることにした。
 年に一度自宅の障子張りをしたりはするが、あれはけっこうやっかいで気を使う。学校の他の職員はもちろん誰もやらないので自発的に手を挙げたのだが、事前に寮を点検したところ思ったより枚数が多くて少し後悔した。
 結局、2日がかりで20枚近く張り替えるハメになり、全室明るくなった。しかしボロい寮の寒い廊下で作業したぼくは、正月を前に体力消耗し気持ちが暗くなった。
 留学生は、たかが障子と思っていたようなフシがあったが、多少の効果はあったらしく、冬休み明けにようやく感謝された。
 まあ、許してやろう。(^_^;)