上海のカオス

 「北京人(北京っ子)は中国人。上海人(上海っ子)は上海人」といういい方があるそうだ。
 何となく、東京と大阪の関係に似ていなくもない。大阪人は、日本という枠をこえたアイデンティティを持っているような気がする。
 たとえば生粋の大阪弁話者は、とりわけプライドが高い。いくぶん、マスコミがつくり上げた大阪像というのもあるかもしれないが。
 さて上海人であるが、にわか作りの在住外国人には、そうかんたんにその正体はわからない。しかし、一年間住んでいた泉州の人々とのちがいは微妙に感じる。
 とはいえ、内面のちがいを論じるための経験やデータは乏しく、その力量もないが、とりあえず外見というか流行というか、ライフスタイルのちがいは見ることができる。
 たとえば、ここ上海ではパジャマで街に出て散歩したり、買い物したりする人をたくさん見かける。どうみても新しい外出着には見えない。もちろん老若男女である。
 「公」の意識がちがうとすれば、まあ納得はできるんだが、まだネグリジェで歩いている女性は見たことがない。
 もうひとつ気になるのは、ザックやデイパックを、赤ん坊を抱くように自分の前にかけて歩く人である。
 地下鉄やバスのなかでは、盗難防止が主な理由だろうが、そんなに治安が悪いわけでもなさそうだから、アレもひとつの流行のような気がする。
 当初はずいぶん奇異に感じたが、風景として見慣れてしまった。だが、日本でメタボ検診にひっかかりそうな人がそういうスタイルで歩いているのは、かなりのパフォーマンスではある。
 もしかしてアレはアレでけっこう楽なのではないか、と思って一度まねてみたが、通りの商店のガラスに写った自分の姿を見て、すばやく通常のスタイルにもどした。
 歩きながら物を食べる人もやたらに多い。路肩でいろいろな食べ物を売っているから、そういう買い食いスタイルになってしまうようだ。
 中国では人と人の距離が近いので、ときどきソフトクリームなどをくっつけられそうになる。そういえば、すぐ間近で煙草の煙を吹きかけられたこともあった。カオスの町である。(O_O)
(photo:裏通りはカオスである)