環境問題

 部屋の白い壁と天井が高さが、このホテルがわりと古いことを物語っている。必要最小限の調度品はずいぶんくたびれているし、敷かれているじゅうたんは、新品がどんな色だったのか想像もつかない。
 シャワーは水漏れが激しく、壊れるのも時間の問題だろう。掃除が行き届いていない(たぶんされていない)その一角はカビ臭いし、お決まりのように排水溝はすぐに詰まる。
 水回りでいえば、洋式トイレの蓋をまくったひょうしに、蓋が外れたこともあった。
 ま、このクラスのホテルに多くを期待するのもムリがあるだろう。エアコンは動くし、お湯もちゃんと出るので、宿賃に照らし合わせば(一泊160元)これでも十分ぜいたくではある。
 そんなホテル暮らしにもいくぶん慣れたが、どうしても慣れないのは、環境である。環境とは、住人(客)の所業のことである。
 僕と同じように、ここを宿舎代わりにして住んでいる中国人学生もたくさんいる。日本の若者同様、いや、今の日本の若者にくらべれば、ずいぶん明るく屈託がない(ように見える)。
 僕の部屋と、通路をはさんだ反対側に、そんな学生の女子が2人、部屋をならべている。そこへ毎日のように男たち(学生らしい)がやってきて、部屋に入り、ときには廊下で大声を発して騒ぐのである。
 おじさんだって無粋じゃないから、夜半のうちはまだ大目にみてやってもいいが、深夜にはじめるのはやめろよなぁ。それに、ドアぐらい閉めろよ。女の叫声もいらないのだよ。
 一般客のなかには、なぜか廊下で長電話をする男がいるのである。煙草を吸いながら、もちろん大声である。ときには廊下を行ったり来たりしながら喋っている。どうして自分の部屋でかけないのだ?
 煙草の臭いが僕の部屋まで入りこんでくるわ、だいいちうるさくて寝られない。
 先日は、近くの部屋の住人が、部屋を出るときカードキーを抜いて、ドアをきっちり閉めずに行ってしまったらしく、小さな警報音が鳴りっぱなしだった。
 ーー楽しいホテルである。ティッシュで耳栓をつくり、やっと安眠につく。
 もうひとつあった。僕の部屋の窓の近くで、ホテルの外壁を装飾している金属板が外れそうになっている。風の向きによっては、それがブラブラと動いて壁にこすれて、ちょうどチョークが折れて黒板を爪で引っ掻いたような音がするのだ。
 そろそろホテル側に注意しなければいけないが、きっとアレでずいぶん寿命を縮めているにちがいない。(-_^:)
(photo:地下鉄入り口)