非日常的な日常

 上海市の虹口区に、魯迅公園という有名な公園がある。木々が生い茂るかなり広い公園である。
 口の悪い中国人は、“老人公園” と揶揄するそこには、実際、ひがな一日多くの老人が公園でくつろいでいる。
 そんな光景を見ていると、中国も近い将来、一人っ子政策の影響で日本のような高齢化社会を迎えるのではないだろうか、と感じてしまう。手元にデータがないので確証はないが。
 その魯迅公園の近くに上海W大学がある。僕が通う中国語学校は、その校内にある。といっても、直接大学と関係しているわけではなく、大学が外部に開放している教育施設を利用して運営する、民間の語学学校である。
 カリキュラムは、いくつものコースに設定されており、自分の都合に合わせてかなり柔軟に選択できる。僕が入っているのは、「初級全日制コース」である。午前中4コマ、午後2コマの月曜日から金曜日までである(1コマ45分。金曜は午前のみ)。
 全日制コースは8週間で1クール。つまり、初級の教程を8週間で詰め込むわけである。じつは、もうすでに息があがってきている。無謀だったかもしれない。
 そうして毎日、オーバーヒートした空っぽ頭をかろうじて支え、うつろな目をして宿にもどるのである。その倒れ込む “我が家” は商務酒店、つまりビジネスホテルである。
 学校から歩いて10分程度のこのホテルは、中国語を学びにくる日本人や、この近辺にある大学の学生たちの定宿のようになっている。
 ホテルの廊下で喋ったり、煙草を吸ったり、大声で電話したりする光景は中国の他のホテルと変わらないが、学生寮のように若者が時間を気にせず騒ぐのには閉口する。
 さらに最強の強者は、じゅうたん敷きの廊下で痰を吐くのである。そういえば、雑巾のようになっているじゅうたんは、かつてはどんな色だったのだろうか。
 泉州の職員寮にくらべればこれでもはるかに立派できれいな部屋だが、どこかなじめないのは、ホテルというあくまで短期滞在者向けの装置が、気持ちを落ち着かせなくしているのかもしれない。(-。-;)
(photo:最近写真を撮っていない。これは4月の上海)