得感冒

 異文化のギャップに驚いたあの泉州でさえ、しばらく住んでみると、宮崎アニメのキキではないが、この町が好き、と思ったものだ。
 ここ上海はどうだろうか。観光に来たことも含めれば、もうずいぶんこの町に滞在している。でも、どうしてなのか、自分はこの町に足が着いていないような気がする。
 じつは、体調を崩してしまった。先週の土曜日、郵便局をさがしたときに異様な汗をかいた、あれがどうも臭い。しまった、と思った。
 そして、ウイルスの潜伏期間をへて、先週のなかごろからおかしくなった。のどの痛み、鼻水、微熱。
 木曜日にはついに早引けしてしまった。ムリすれば午後の授業も大丈夫だったのだが、早引け、などという行為もやってみたかった。新鮮だったが、気分は新鮮とはほど遠いものだった。
 「風邪をひく」は中国語では「得感冒」である。「病気になる」は「得病」である。日本人にすれば、なんだか少し違和感のある表現である。
 しかし、どこからか上海のウイルスを「得た」のである。ほしかったわけではないが、それほどタチの悪いやつでもなさそうである。
 上海では、ほとんど学校と宿を往復している。先週末は天気が悪く、今週末はこの体たらくである。もちろんウィークデーは予習復習に忙しく(ほんとだ)、遊ぶヒマがない。
 昨日は、週末の予定を明るく話す若いクラスメートを尻目に、とぼとぼと宿へ帰った。
 そんなわけで僕の上海は、今のところずいぶん世間がせまい。ビールとの付き合いもあまりない。仏頂面のコンビニねえちゃんには慣れたけれど、都市機能が発達したこの町にはなかなか慣れない。
 もしかして、ここは自分の居場所である、と思っていないのかもしれない。たぶん、まあ風邪が治れば答えもみえてくるだろう。(;_;)
(photo:上海孔子廟にて。これも4月)