パンツをめぐる昨今

 日々の雑事でめんどうくさいのが、洗濯である。ホテル住まいなので、洗面所で手洗いするのも勝手が悪いし、クリーニングに出せばお金がかかってしょうがない。
 ここのホテルは学生が多いので、業務用兼従業員用の洗濯機を借りることができる。最近2台になったことでとても便利になった。
 ところが先日、その2台ともふさがっていた。ちっ、と舌打ちして出直そうと思っていたら、顔見知りの従業員のおばさんが現れ、「いいから置いていきなさい。洗っといてあげるから」といわれた。
 パンツも何枚かあるので一瞬躊躇したが、彼女の好意を受け入れることにした。臭っせいパンツだわ〜、などといいながら洗濯機に放りこんだことだろう。まあとくべつ異臭がするわけではないが、ジャスミンの香りがするわけでもない(そのほうが不気味だが)。
 中国では洗濯物を堂々と外に干してある。パターンはいろいろあるが、おもしろいところでは、街路樹の木と木に紐をわたしてかけてあったりする。もちろん下着類も、ためらいなくぶらさがっている。一応公共の場ですが。
 大急ぎでお断りしておきますが、僕は洗濯物を観察して歩いているわけではないのですよ。比較文化としてテーマに取り上げただけですので、誤解なきよう。
 先日「朱家角」という水郷の町へ行った。上海の西の端である。市内から高速バスで1時間。明朝や清朝時代の町並みがそのまま残っている老街だ。
 通りはせまく、ちょうど京都の先斗町のような感じだろうか。人が集まる観光地なので、当然のように家々はほとんど土産物やレストランになっている。
 そのせまい通りを、おおぜいの観光客が行き来する。なかなか思うように進めないので、ふと頭上を見上げると、洗濯物たちが涼しげによそ者たちを見下ろしていた。
 観光地でさえこうである。いずれにしろ、その開けっぴろげな生活臭に拍手をおくりたいところだが、中国青少年の教育上それでいいのですか。と、日本のまじめなPTAの方々のようにひとこといわなければなるまい。
 当然日本なら大問題である。近所づきあいに支障をきたし、暴徒と化したPTAが教育委員会に乗り込み大きな社会問題となり、時の政府は頭をかかえるかもしれない。
 たかがパンツであるが、日中では大きくちがうのである。つまりは、大陸人と島国人のメンタリティのちがいなのかもしれない。まあ、たんなる文化なのかもしれないし。
 そういえば、泉州の学校で同僚だった、中国生活が長い日本人先生は、堂々と屋上に干しておられた。もちろん男の先生だったけれど。(@_@;)
(photo:水郷古鎮・朱家角にて)