静かな休日

 「先生、こんにちは」「あ、おまたせ。久しぶりだね」
 「お元気ですか」「まあまあかな。キミは?」
 「ちょっと風邪をひきました」「え? 大丈夫なの? わざわざ来てくれて」
 「ええ、もう治ります。でも、先生から急に電話があってびっくりしました」「ごめん。ここに来たかったんだけど、キミの町だから一応電話しとこうと思ってね。まさか来てくれるとは思っていなかったよ」
 「先生はここが好きですね」「ああ、ここでぼんやりしていると落ち着くんだよ。静かだし、水をながめていると魚がはねたり、野鳥が飛んできたり……」
 「そんなにいいですか? よくわかりません」「うん、まあそのうちわかるよ。ところで、大学は楽しい?」
 「まだ慣れないからわからない。ちょっと退屈かな」「どうして? 日本語の授業はどうなの?」
 「また初級からだからつまらない。退屈。でも、会話の男の先生は日本人ですよ」「へ〜、若い人? カッコイイ?」
 「うん、若い。人気があるよ」「そうか、ライバルだな」
 「ライバル? それ何ですか?」「う〜ん、まあ気にしなくていいよ」
 「…………。中国人の奥さんがいるんです」「はは、そうか。それはちょっと残念だね。ところで、この連休はどこへも行かないの?」
 「はい、家でのんびりしています」「でも、変な先生から電話がかかってきたり……」
 「そうですね。先生、今日はどこへ行くんですか?」「う〜ん、ここに来られたからそれでいいんだけど、そろそろ行こうか」
 「はい、でもちょっと恥ずかしいです」「え、何が? ……あ、そうか。はは、誰もカレとカノジョだなんて思わないよ」
 「はは……」「せいぜいが……『せいぜい』ってわかる? せいぜいが親子かな」
 「う〜ん……おじいさんと孫?」「あん?」 (^_^)
(photo:南京、玄武湖にて)