南京の休日(2)

 南京は古都である。明代の城壁も残っているが、日本軍がかなり破壊したらしく、あちこちで修復のあとが見られる。そこには、敵に壊された、ということもちゃんと案内板に記されている。
 表通りは、近代化が進む中国の他の大都市同様、大きなビルが建ち並ぶ。しかし、一歩裏通りに入ると昔ながらの庶民の生活が営まれ、大都会でありながら上海ほど垢抜けしていない。むしろ泉州に近い臭いが感じられる。
 この町の人々は、日本人に対してひとかどならぬ思いをいだいているだろうと思って、できるだけ正体をさとられないように、伏し目がちに街の隅を歩いた。
 なんてことはないが、大通りを歩くとけっこう日系の企業が目につくし、和食の店もずいぶん多いことに気がついた。
 それも時の流れだろうけれど、若者などはその姿カタチは上海とあまり変わらない。もちろんイチャイチャ度も同じである。
 帰りの南京駅のホームでは、遠距離恋愛なのか、別れの熱い抱擁と◯◯を交わすカップルを2組目撃した。それは、確実に僕の疲労の蓄積に貢献したと思う。
 南京は、名所旧跡めぐりに困ることはない。しかし、公園ひとつとっても日本とはスケールがちがうので、一カ所まわるだけでも骨が折れる。それに、人も多いのである。
 以前にも書いたが、この国と日本とは自然に対するとらえかたが少しちがうようである。この国では、人の手が入った自然や人工の自然のほうが、むき出しの自然より好まれているような気がする。
 もちろん、観光地化にはそれなりの整備が必要だろうが、要はその度合いなのかもしれない。とにかく、こちらでは徹底的に整備されている。
 加えて、国民性や文化のちがいもあるだろう。たとえば、僕の知っている福建省や上海の寺院を例にとれば、宗派はまた別の話しとすれば、こちらのほうはデコレーションが派手で賑やかであり、日本のほうは地味で素っ気ない。
 まあ、2日やそこら南京を歩いただけで南京は語れない。南京にとっては貴重な秋の行楽日和、どこへ行っても巻き込まれる人の渦に辟易しながら、昼下がりの南京駅に避難した。
 一服したコーヒーがずいぶん苦く感じたのは、やはりこの町の味だったのか、単に豆のせいだったのかはわからない。(^_^;
(photo:中華門。トンネルではない。門が幾重にもつづいている)