お茶で一服
「先生、お元気ですか?」「ああ、A君、久しぶりだね。元気だよ」
「先生は、また中国へ来ましたか?」「ああ、そうだよ。夏休みはどうだった?」
「休みなんかありませんよ」「バイト? でも、9月から大学だろ?」
「じつは、考えたんですけど、やっぱり家の仕事を継ぐことにしました」「えっ? じゃあもう働いているの? なんの仕事だった?」
「お茶です。お茶を作っているんです」「そうだったね。鉄観音の産地だったね」
「そうです。大学へ行って、もう少し日本語の勉強をしたかったのですが……」「お父さんお母さんに、帰って来い、といわれたの?」
「それもあるんですが、仕事で日本語はあまり必要なさそうだし……」「そうなの? 日本のメーカーが買いに来たりするんじゃないの?」
「はい、そうです。でも、中国語で十分なんです」「そうか。勢いのある国はちがうね」
「日本人はウーロン茶が好きなんですか?」「そう。ほかにジャスミン茶とか……」
「ジャスミン茶? フフ……あれは屑茶に香りをつけただけですよ」「ええっ?」
「先生は知らなかったのですか」「知らなかった……。嫌いじゃなかったのに」
「でも、うちでは屑茶は売りません」「えらいね。で、どうするの?」
「企業秘密です」「…………」
「日本では、放射能汚染された食品がたくさん出ていますね。大丈夫ですか?」「あまり大丈夫じゃないよ。ひそかに流通しているんだ」
「食べてるんですか?」「ああ、知らないうちにね」
「食べてはいけないと思います」「どうすればいい?」
「埋めればいいんです」
(学生との会話より(^_^;))
(photo:たまにはおしゃれなランチを)