2016-01-01から1年間の記事一覧

黄昏の歌声

休日の夕方、家で本を読んでいると外で大きな声がした。それはどうやら歌声のようだった。 夜遅くときどき、近くを通っていく酔っぱらいのような男の歌声を聞かされることはあるが、まだ明るいうちからの歌声はまれである。 よくよく耳を澄ますと、その歌声…

ムズとゾワと異文化交流

「国際交流、ということばは好きじゃない」といったのは、日本語講師仲間のNさんである。 ーーなるほど、はっきりいうなぁ……と僕は思った。 たしかに「国際交流」ということばを聞くと、背中のあたりがムズっとする。いわんや、自分がうっかり口にしようもの…

加齢からの逃避

先日、プリンスが亡くなった。 プリンス、といっても洋楽に興味がない人は知らないかもしれないが、まあこれがどえらい才人なのである(あった)。常軌を逸した、といったほうがいいかもしれない。 少し前には、デビッド・ボウイやグレン・フライの訃報を聞…

想像を超えるときに

地震雷火事親父ーー。 怖いもののトップは、昔から地震である。なにしろ「土台」が揺らぐんだから、こんな怖いことはない。今まで信じていたものが崩壊してはたまらない。 人の思考は、これまで経験してきたことを基本として成り立っている。とくに身体性に…

そうそう考えることもない「葬送」のこと

町内会長をしていた去年は、朝いちに新聞のお悔やみ欄を見るのが日課だった。 その点今年は肩の荷が下りた気はするが、後期中年者にもなると、ぼちぼち同級生や同年代の死に遭遇する。 死は、生きているたいていの人にとって、できれば考えずに忌避したいこ…

ジジイのトシ、ババアのトシ

カタクリを探しに近くの里山へ行った。ねらい通りたくさん咲いていた。 桜の時期と重なったこともあって、平日にもかかわらずかなりの人出だった。老人たちは想定内だが、親子連れや孫連れもちらほら見かけた。 連れ合いとぶらぶら散策していると、うしろか…

やっぱり春は桜か…

「中国に桜はありますか?」と中国人に聞いたが、いささかバカな質問だった、とすぐさま後悔した。 まったく気候がちがう国ならいざ知らず、中国に桜の木ぐらいはあるだろう。 案のじょう彼女は、「ありますよ。でも、日本人ほど桜に興味がないようですね」…

ボケているのは誰か?

「平和ボケ」ということばある。戦争の必要性を認める “積極的平和” を唱える国防派の人々が、たいていいつも使う。 日本はこのままでいいのか。中国が攻めてきたらどうするだ。北朝鮮がミサイルを撃ってきても指をくわえているのか。 アメリカに守ってもら…

怒りの矛先

いささか旧聞に属してしまうが、「保育園落ちた日本死ね!!!」はとても秀逸なコピーだったと思う。 どこがすごいかといえば、この短いフレーズのなかに今の日本社会がかかえている問題が透けて見える点である。 まずは「保育園落ちた」というところ。 落ちた…

捨てる技術は未熟である

本が溜まって、あちこちに置いてある。 若いうちはいちいち本棚に収納して、その姿をながめては悦に入っていたものだが、そのうちそんなマスターベーション的行為がアホらしくなってしまった。 本棚があるので一定数は収納されているが、古くなったものから…

タマネギの効用

ずっと低血圧だった。といっても病的ではなかったが、朝はなかなかエンジンがかからなかった。 だから、朝から元気がないやつは怠け者だ、というような高説をたれる連中がうざいと思っていた。 ときどき通うフィットネスクラブでは、運動する前に必ず血圧を…

開聞岳逍遙

鹿児島は薩摩半島の先端に「開聞岳(かいもんだけ/924m)」という山がある。 どこから見てもコニーデ型の秀麗なかたちをしているこの山は、「薩摩富士」とも呼ばれている。深田久弥の百名山にも選ばれている。 ずっとあこがれの山だった。何があこがれかとい…

議員と言語

「(前略)…誤解をあたえたとすれば、お詫び申し上げします」 というフレーズをよく耳にする。とくに議員先生からよく聞かされる。 ここで問題とする箇所は、「とすれば」という部分である。 発言者の心理はおそらく、「わたしは真っ当なことを述べたのだが…

世界記録はインチキかも

シャラポアがドーピングだって。えっ、まさか?……と思うほどウブではないが、いささかの驚きはある。ちょっとファンだった(過去形だが)もんでね。 たまたまシャラポアは見つかってしまったが、ドーピングの問題はおそらくスポーツ界全体に蔓延しているのだ…

特別な火曜日

今日は「スーパー・チューズデー」だそうだ。 「スーパー」の「ス」にアクセントをつけてはいけない。そうすると、「チューズデー」というスーパーマーケットになってしまうからだ。 ま、つまらない冗談はさておきーー。アメリカ大統領予備選挙の話しである…

パンツと2月の過ごし方

ぼんやりしていたらもう2月も終わりなのである。振り返るとこのブログも、今月は更新があまりないことに気づいた。 いったい何をしていたのだろうか。ああ今日は寒いなぁ〜とつぶやき緩慢に身辺雑事をしている間に、ああもう夕方かぁ〜といってビールを飲む…

謎の北朝鮮

北朝鮮のミサイル発射時期にタイミングを合わせたわけではないが、たまたま最近北朝鮮関係の本を2冊読んだ。 まずは、『生きるための選択』(パク・ヨンミ著、満園真木訳/辰巳出版/2015年)。 著者は若干22歳の女性。13歳のときに、母とともに脱北した。逃れ…

腐っているものは食べられない

少し前に、消費期限切れ食品の横流し事件があった。 買って食べた食品がすでに腐っていたものだとしたら、いくら安くてもそれはすでに食べ物ではない。 安さを最優先する消費者心理があるかぎり、こうした事件は無くならないだろう。 この国では生産者と消費…

着々と監視システム

H電力の下請け会社が、従来の電気メーターをスマートメーターに交換しに来た。 係員に「交換しなくていいよ」といったら、「あと半年でメーターの寿命がくるので、それ以降は使えなくなりますよ」といわれた。 「それは好都合、カウントできなくなればお金を…

IMFのミッション

Amazonのカスタマーレビューを見ると、星5つの評価が多い。懐かしさも手伝ってのことだろうが、ついつい僕もカートに入れて購入してしまった。 買ったのは『スパイ大作戦 シーズン2』のDVDセットだ。DVD7枚に21話収録。4,000円ぐらいで買えるとなると、お得…

a社の女子ロボット

パカッと開くと、カチッと小さく音がする。しかしそれは一昔前の話しであり、今や誰もが指で何かこちょこちょやっている。イヤホンをしている人も多い。 ガラケーは絶滅危惧種となり、スマホと呼ばれる機械がハバを利かせているのである。 僕はいまだにガラ…

上書きしない日本

1月7日に書いたマジックショーの顛末に、それはないやろ〜、という苦情(ではないな、指摘か)が寄せられた。 ん〜、ごもっとも。確かに常識的に考えておかしい。 そのときの記録、たとえば日記でも書いていれば胸をはってドヤ顔できるのだが、記憶は上書き…

戦略大作戦

政権与党のある政治家が、選挙公約は意味がない、といった主旨の発言をしたことがある。 裏を返せば、あんなもの守る必要がない、ということだが、まあ理屈はこうである。 「公約」というのは、その時点でのある問題に対する対策や解決策を政権を取ったら提…

正月の洗礼

頭の痒いのだけはどうにもならん、とグチをいったら、痒くなるほど髪があるのか、と家人にいわれた。 正月も過ぎたある日の夜、歯茎が腫れて痛み出した。虫歯かなと思ったが、治療して神経を抜いてあるところなので判断できなかった。 朝になっても腫れと痛…

007との個人的な因縁

小学生のころテレビで観たマジックが忘れられない。 とても有名(らしい)な白人のマジシャンが、美女を回転する電動丸ノコで切断する、というショーだった。 ほとんど半裸の美女が箱のなかに入って台に寝かされ、たしか頭部と腹部の一部だけが外に出ている…

年賀状あれこれ

新春のお慶びを申し上げます。今年もよろしくお願いいたします。 元旦から三が日、今年は穏やかな年明けである。昨年末には「町内会長」という看板も下ろし、任期も満了したので、正月の酒もことのほかうまいような気がした。 正月用に保存してあった、暮れ…