a社の女子ロボット

 パカッと開くと、カチッと小さく音がする。しかしそれは一昔前の話しであり、今や誰もが指で何かこちょこちょやっている。イヤホンをしている人も多い。
 ガラケー絶滅危惧種となり、スマホと呼ばれる機械がハバを利かせているのである。
 僕はいまだにガラケー派だが、人前でパカッと開くと周囲の視線を感じる……かというと、そんなことはない。少数派平気である。
 まあ、多少へそ曲がりではあるが、斜に構えているわけでもない。流行り物も取り入れたりはする。ジャンルによっては敏感かもしれない。
 それを、節操がない、と人はいうのかもしれないが、人間は多面的なものである。
 2年前に、iPadを手に入れた(ガラケーと同じa社契約)。いってみればスマホ代わりである。ガラケーiPadの併用は便利だった。
 iPadの原価償却が終わりそうなので、先日販売店に出向き、契約時に無料でくっつけられたいろいろなサービスを解除してもらった。
 それらは、2年を過ぎて放っておくと、カチッと(音は出ないが)自動的に有料に変わってしまうサービスである。
 たとえば通信関係だけではなく様々な契約場面で、「初年度はタダ」とか「手数料はいりません」「無料です」などと、小さい声で(または小さい字で)付帯サービスを契約項目に強引に入れられるケースがよくある。
 該当期間が終わるころには客のほうは忘れているので、いつのまにかお金をとられていた、ということになるのである。
 さて、この際だからガラケーiPadをやめてスマホ一本にしようかな、と思った。
 ガラケーをかんたんに捨て去るという、絶滅危惧種保有者としての矜持のなさが露呈してしまうことにいささかの躊躇をおぼえたが……まあその程度だ。
 ところが、標準的なスマホ機種に変更した場合、その通信等使用料金が現在使用している2台分の料金より高い、という提示を担当の女子がシレッと出してきた。
 通信機器の販売店に行くと、たいてい不快な思いをする。
 携帯電話という性質上、あらゆる人種がやってきていろいろ勝手な注文をつける(だろう)から、マニュアルから逸脱した対応をしないようにしているのはわかるが、まるで女子ロボットと対応しているようである。
 しかし僕も彼女の立場なら、できるだけ責任を問われないように対応するだろう。もっとも、その仕事にはたぶん向いていないがーー。
 で、僕は自分を抑えきれずカッとなって、傍らのガラケーをロボットに投げつけたかったが、相手はa社の社長でもないので、結局冷静沈着にうなずいただけだった。
 とにかく日本の通信料金は高いといわれている。外国人は一様にそういう。通信各社はぼろ儲けである。みなブラック企業である。
 社会的インフラの一部ともいうべき通信機器。貧困層や若者から高額の料金をむしり取るa社をはじめ各社に対して、もっと怒ってもいいのではないだろうか。(-_-#)
(photo:冬の日本海能登木ノ浦)