コチニール・マジック

 『昆虫食入門』(内山昭 著/平凡社新書/2012年)という本を読むと、もしかしてセミやアリもおいしいかも、と思ってしまう。いや、思わないかーー。
 しかし、全世界にくまなく分布するタンパク源を無視するのはもったいない。とばかりに、昆虫食の魅力と現状をこの本は伝えている。
 とはいえ、一部を除き、まだまだ昆虫食はマイナーだろう。
 サボテンに寄生する、カイガラムシという小さなムシがいる。体長は3mmくらいのようだ。そのムシを乾燥させて、エチルアルコールの水溶液などにひたしておくと、体内からじわ〜っと赤い色がしみ出てくるという。
 じつは、そのムシの赤い色素を僕たちは食べているのである。
 身に覚えがない? でも、赤やピンクの食品ならいろいろ思い浮かぶはずである。どぎつい色とはかぎらない。淡い、いかにもおいしそうな色が、食品に付加価値をつけている。
 お酒、清涼飲料、お菓子、加工食品ーー。これから春になればイチゴの色、桜の色ーー。
 この便利な、自然からの贈り物を「コチニール色素」という。れっきとした食品添加物であり、広範囲に使われている。ときどき「天然着色料」と表示されている場合がある。
 天然といわれると、よさげに思ってしまうが、天然ほど恐いものはない。
 あいつは天然だ、という天然のあいつの天然さは、やはり恐いはずである(ちょっと話しがちがうか……)。
 とにかくコチニールには、アナフィラキシー・ショック(急性アレルギー反応)を起こす事例が報告されている。消費者庁が注意喚起しているのだから……困ったものだ。
 でもまあそういうことをいちいち気にしていたんじゃ食べるものがない、と人はいう。
 たしかに、過度に神経質になる必要はない。でも、毎日の食べる物に多少関心をもつとまたちがったものが見えてくる。たとえば、コンビニ弁当の原材料表示をみてみるとおもしろい。
 コチニール。覚えましたか? (^-^)
(photo:「でくの舞」。東二口にて。次回報告)