プロコフィエフが残したもの

 子のために美田を残しても、たいていロクなことにはならない。得てして子は、親の想いよりもその実利に感謝しがちだ。だから、道をまちがえてしまうのだろう。
 子を想わない親はいないだろう。
 たとえば、ロシアの作曲家プロコフィエフは、我が子のために『ピーターと狼』という楽曲をつくった。
 しかし、我が子のためのこのアイデアは、後々世界中の多くの子どもたちにも感動をあたえた。プロコフィエフはどう考えていたのかわからないが、これぞ子どもたちのための “美田” ではないだろうか。
 そんな名曲に再びめぐり会えたのは、オーケストラ・アンサンブル・金沢(OEK)の演奏会である。楽団の音楽監督井上道義氏の脚色によって、じつにユニークな仕上がりになっていた。
 音楽と語りでストーリーを構成するこの楽曲は、コンダクターの井上氏の演技といおうか、そのキャラなくしては成り立たない。彼の、クラシックの敷居を低くすることにかけるエンターテインメント精神が、熱く伝わってくる。
 じつは、洋楽のロックばかり聴いていた若いころ、ふとしたきっかけで買ったクラシックのLPが『ピーターと狼』だった。
 たしかロンドンフィルの演奏で、指揮はアンドレ・プレヴィンだった。語りには、その当時プレヴィン夫人だった、女優のミア・ファローが出演していた。
 映画が好きだったけれど、とくべつミア・ファローのファンでもなかったから、きっとアンドレ・プレヴィンにひっかかったのだと思う。もともとプレヴィンはジャズをやっていた人で、きっとロック界にも接点があったのだろう。
 まあ、その『ピーターと狼』がとてもよかったのである。きっと夫婦仲がよかったんだと思う。今でも名盤だと思っている。
 そんな邂逅をもたらしてくれた井上氏には感謝である。しかし惜しむらくは、せっかくのプロコフィエフの “美田” に子どもの姿が少なかったことである。(^_^)
(photo:泉州市開元寺にて)