慢心して満身創痍

 油断した。風邪をひいた。
 のどは痛いし痰はからむ。鼻水は遠慮無しだし、目はしょぼしょぼ。頭は冬の北陸の空ようだし、身体がだるくて動作がめんどうくさい。
 軽い風邪は年に数回あるが、かかりはじめに薬を飲めばすっきりする。そうやってしのいでいると、いつの間にかタカをくくるようになり、オレだけはかからないと思うようになるのである。
 慢心というやつだ。「慢心」するような誇れる技能も教養もないのに、こういうところで発揮してしまうのが悲しい。オロカだと自分でも思う。
 で、低空飛行を続けてきたが、声が商売道具なので授業でだんまりを決め込むわけにもいかず、つい酷使してしまいはたして墜落した。
 2日前から寝込んだ。鼻をかみすぎたのか、ほお骨を押さえるとじんわり痛む。頭をトントンすると、とくに左のほお骨の内側がキンキン痛む。頭がどうかなったのだろうか。いや、空っぽ頭だからしかたがないのだろう。
 昨夜から耳下にも違和感があり、ウイルスがいろいろなところで活躍し出したようだ。寝ているから腰はとっくに悲鳴をあげているし、なぜか歯茎も腫れてきたようだ。
 風邪は万病の元というが、まさに満身創痍だ。風邪ぐらいで満身創痍というのも満身創痍に申しわけないが、気分はまったくそうなのだから許してほしい。
 今日は授業に穴を空けてしまった。同僚の先生に自習の手配を頼んだので、一応は手当てができた。しかし、歓声を上げる留学生の悪たれどもの顔を思い浮かべると悔しい。
 こういうハメになった発端は、散髪にあった。先週末の寒い日に散髪した。「どこを切ったの?」と家人にいわれたが、余計なお世話だ。
 どうして寒波が近づいているタイミングで床屋へ行ったのか。とくに髪をととのえなければならない差し迫った行事や会合があったわけじゃないし。
 考えてみれば不可解な行動だった。何も考えていなかったのだろう。髪を洗ったあと乾きがおそくなったな、と思ったのがきっかけだったかもしれない。
 「乾かすほど髪があるのか?」と、またいわれそうだがーー。(__;)