猫と暮らす(4)

 ソラがどんな風采の猫なのか、まだ紹介していなかった。
 ーートラである。尻尾が丸い。イメージとしては、耳かき棒の先っぽに付いている綿の部分のような感じだろうか。
 エリザベスカラーを首に巻かれたソラは、暑くてかゆいらしく当初こそいやがって抵抗したが、そのうち我が身の境遇を受け入れた。しかし、首からラッパ状に広がったカラーの空間感覚がつかめず、あちこちにぶつけてはダメージを受けていた。
 右目の抜糸が終わって何日かたったころ、ソラが突然狂ったように暴れ出した。見ると、患部から大量の目やにのようなものを出していた。
 明らかに様子がおかしいので、近所の獣医に運んだ。そのときはもう、目から小さな透明なゼリー状の球体が飛び出していた。獣医は恐れおののき(のように見えた)、すぐ専門医に行くよう指示した。
 しかし、専門医に到着する前にその球体はソラの目からこぼれ落ちてしまった。水晶体が離脱してしまったのである。
 一縷の望みは絶たれ、右目は完全に失明した。あとは、今後生きていくために硝子体の摘出手術をして、右目をふさいでしまわないといけない。
 とはいえまだ体力がなく、体重が増えるまで待たなければならなかった。
 幸い左目のほうは順調に見えるようになっていたので、今のところ生活に大きな問題はなかった。ソラはカラーをはめたまま夏を過ごした。
 自力で食事することができないので、毎食人の手からごはんを口に運んだ。高価な猫缶は贅沢かとも思ったが、食事は完全栄養食であるこの缶詰だけでこと足りるので、人間の食事にくらべれば楽である。ビールも飲まないしーー。
 そして、ようやく眼球摘出手術が終わり、カラーから解放される日がやってきた。首に巻かれてから約2ヶ月たっていた。
 ソラとの平穏な日常が始まった。(^^ゞ
(photo:元気なころのソラ)