寺地山で熱中症

 慣れとはおそろしいものだ。最近は、30度を少し超えたぐらいの気温では、ふ〜ん、である。しかし、気持ちはふ〜んでも、身体は暑さに耐えられずまいっている。
 これが、心身の認識ズレというものらしい。高齢者がいつのまにか熱中症になる要因のひとつだ。
 なんで早めに水を飲まないんだ、と高齢者の不幸なニュースを見聞きするたびに思うのだが、まさか自分が熱中症になるようなミスを犯すとは思わなかった。まあ、正確には熱中症一歩手前だったがーー。
 先日、山へ行った。この時期は、標高の低いところはとても暑い。多少高度を上げても、山道を登ればハードな運動になるので、3000mの稜線でも暑いのである。
 日帰りの日程でしか時間がとれなかった。
 暑さを避けるのなら、観光用交通機関が整備された立山方面か西穂高方面になるのだが、旧盆連休のさなかでは、登山道に入るまで確実に阿鼻叫喚地獄が待ち受けている。
 しかも両山域とも、日帰りコースはすでに何回もあちこち踏破してしまったので、新鮮みに欠けるのである。
 そこで登場したのが、寺地山(1996m)だ。しかし山好きの人でも、Teraji? Where? でしょうね。
 岐阜県北部、富山県との県境にある山なんだが、じつは北アルプス北ノ俣岳に至る神岡新道のコース途上にあるじみ〜な山なのである。
 したがって、ふつうこのコースを通る登山者は北アルプスをめざすので、寺地山はいわば “行きずりの山” のような扱いなのである。
 登山口となっている飛越トンネル駐車場は、すでに1450mだ。10時に歩きはじめたときの気温は24度だった。
 涼しいと思ったのもつかのま、すぐさまぐいぐい高度が上がり、一気に汗が吹きだした。
 いつもは歩きはじめの序盤で、その日の体調と相棒(連れ合い)の様子をみながらペース調整するのだが、その日は体温の急上昇で思考が停止し足元も乱れ、アクセルしかない車のように進んでいったようである。
 当然、若さを失った身体にはすぐさま負担となり、気がつくと登山道にへたり込んでいた。連れ合いにいわせると、真っ青な顔をしていたそうだ。
 しばらく休み、スポーツ飲料と塩分を補給して回復した。
 じつは今年の春から、山行のタイミングがなかなかとれず、ずっとブランクがあったのである。だから、身体が山モードに切り替わらなかったのだろう。
 しかし寺地山は、尾根上に小さな湿原が次々現れる、なかなか潤いのある山であった。(^_^;)
(photo:イワショウブ。寺地山にて)