平和ボケはいけないか?

 外国を旅すると、つくづく日本は平和だな、と思う。治安がいい、といってもいいが、街を歩いていても警察の姿が目につくことは少ない。
 外国なら警察はおろか、武装した軍隊を見かけることもある。武器を手にしている彼らを見るだけでも、全身がこわばり緊張する。
 その場から走って逃げたくなるが、そうするとかえって不審者と思われ追いかけられたりすると困るので、右手右足、左手左足がいっしょになってゆっくり歩いて立ち去る。
 どれだけ小心なのか、と思われてもいい。暴力装置はやはり怖いのである。
 ネパールの首都カトマンズで一度、治安部隊に銃口を向けられたことがある。王制末期の、マオイストが猛威をふるっていた時期のことだ。
 とっさのことだったので、そのときは状況がすぐさま飲み込めなかったが、ホテルに戻って怖くなってしまった。
 福建省の深戸という漁港を、フラフラ巡りながら写真を撮った。尖閣問題で日中関係が険悪になっていたときである。
 そこは、我が国の海上自衛隊の巡視船に体当たりした中国船が出航した港だった。船長はその町に住んでいて、ほとんど自宅軟禁状態だった。
 そんなことは全部、あとで知った。
 当時勤務していた日本語学校の同僚は、よく公安に捕まらなかったねと、好奇心に満ちた顔をしていった。
 あのときは、深戸にある生徒の実家を訪ねたのだ。案内ガイドにと、4〜5人の彼女の同級生たちを連れて行ったことが我が身を守ったのだろう。
 中国ではだいたい、港湾や空港の写真をみだりに撮ると公安が寄ってくる、ということも同僚がおしえてくれた。とくに「ホットスポット」は危ない、とも。
 平和ボケの日本はやばい、と、与党の好戦的な方々がおっしゃる。平和ボケ、何が悪いのか?
 憲法違反の安保法制を、何がなんでも成立させようとしている先生方のほうがボケているんじゃないのか? (-。-;)
(photo:ハクサンフウロ飯縄山にて。2015)