検査員の隠された使命

 我が家では、洗濯機専用にガス小型給湯器を一台使っている。某リンナイというメーカーの製品である。
 ところが、ずいぶん前から温度設定ダイヤルが硬化して、回らなくなっていた。ほとんど洗濯用の給湯に利用するだけなので、さして不都合はなくそのままにしておいた。
 先日ネットの情報で、その某リンナイが「無料点検」を実施していることを知った。
 調べてみると、うちの機種も該当していた。そうかそうかこれはラッキー、と思ってさっそく申し込んだ。
 数日後、検査員がやってきた。誠実そうな彼は、時間をかけて一通り点検した。
 作業終了後、彼はチェックシートを前におごそかに(そんな気がした)口を開いた。
 「お客様のこの機種はすでに10年以上経っておりますので、メーカーとしては使用時のトラブルについては責任を負いかねます。すでに交換部品もありませんので、不具合を直すことができません。危険ですので、買い換えをお勧めします」
 といって、「使用禁止」シールをペタリと貼り付け、帰っていった。
 なんのことはない。彼は無料点検をかこった、死刑執行人だったのである。まるで、責任回避を通告し開き直る、どこかの電力会社のようである。
 やられた。ワナだった。やつらの巧妙な手口は一枚上だった。タダより高いものはなかった。さすが大企業。
 と、感心している場合ではなかった。爆発しても自己責任である。いや、爆発するのは困る。
 PL法はどうなんだ! 無責任じゃないか! などと気色ばんでもあとの祭り。あの手の給湯器の事故が頻発してから、メーカーは古い機種を大急ぎで切り捨てようとしている。
 やはり、一旦作って売ったものは最後まで責任を持ってほしい。この国では、あまたのことの最終責任は下々の者がかぶることになっているようである。(-_-;)
(photo:モズ)