やっちまったこと
失ったものを列挙するーー。
積み上げてきた時間、かかったコスト、信用、報酬……。
買ったものを上げてみるーー。
怒り、恨み、不信……。
およそ1年かけて、先月ようやく納品した本にミスがあった。
1文字ーー。
たった1文字だ。とはいうものの、それが人名だとちょっと事情が変わる。しかも見出しに入っている文字とくれば……アウトだ。
そりゃ〜文字を打ったやつが悪い。……それは僕だ。
テキスト原稿はもらっていた。そこからコピペすれば間違いがなかった。しかし、短い見出しは打ったほうが早いので、ついついそうした。
元請けの校正者は見落とした。顧客も気づかなかった。顧客はともかく、元請けの責任は問われるだろうが、こっちは下請け、立場が弱い。
ーー刷り直しだ。1文字ミスの代償はあまりにも大きかった。
心血そそいでいくばくかの報酬を得たのもつかの間、地獄への落とし穴が待っているとは……。まるで『インディジョーンズ/魔宮の伝説』の生け贄シーンである。
とはいえ、種を蒔いたのは自分である。くやしいけれど、それは事実だ。腹立たしい。
人間、調子がいいときに注意しろ、といわれる。でも、けっして調子はよくなかった。むしろうまくいかないことが多い毎日だったのだが、神は非情だ。紙も非情だ。
と、グチってもしかたがない。でも、書いたら少しスッキリした。なにもわざわざ自分の失敗を公表する必要もないのだが、他山の石としてもらえるかもしれないし。
誤字をあてがってしまった当事者の方には、心底申し訳なかったと思う。謝罪します。(; ;)