暗黒面の広がり

 長年の経験値がものをいうというか、応用力がつくというか、とにかくまずい状況になる前に回避する術を身に付けるものである。
 ところが、回避できないこともたまにはある。つまり、「犬を食わぬ何とか」のことである。平たくいえば、夫婦げんか。
 男と女を比較すると、たとえば、戦争をはじめるのはたいがい男である。
 「嫉妬深い女」、といういいかたをするが、嫉妬深さの度合いでいえば男のほうが上らしい。
 「女々しい」、ということばがあるが、あれは男に対して使うことばである。「雄々しい」、ということばも男を対象に使うが、それがふさわしいケースは女のほうに多いような気もする。
 そんなこんなを考えると、連れ合いとのケンカはたいがい男のほうが分が悪い。ときには、無意識に発した一言が地雷を踏む場合だってある。
 その「無意識」に隠された背景に問題があるわけだが、発したほうは問題意識がなかったか、あるいは、不用意だったかのどちらかである。
 まあいずれにしても、口から出てしまったものは取り返せない。弁明してもムダである。
 人間の性格や思考、感情や意識は多種多様である。
 サイコロは6面体であるが、一人の人間のそれらを面で表すと超多面体になる。また、一つひとつの面の広さもちがうのである。
 そして誰しも、人として好ましい面と好ましくない面を持っている。たいがいの人は、好ましくない面を意識していないか、意識しているとすれば、面が小さくなるよう努めているはずである。
 ところが、何かのひょうしに好ましくない面が出る場合がある。本人にとっても周りにとっても困ることだが、それはある程度避けられない。
 しかしそれは、超多面体の一面でしかない。その面が大きいのなら問題だが、そうでないならさほど問題ではないだろう。
 たとえば、「人を殺してみたい」などという危険な感情は、通常は持ち合わせていないか、万が一持っているとしても表に出ないような小さな面になっていることだろう。
 ところが最近は、そういう感情を刺激するものが多くなってきている。スターウォーズではないが、暗黒面のチカラが強くなっているのである。
 まあ、夫婦げんか程度なら平和の範疇だが……。(^_^;