ベトナム人実習生の風邪

 いつの間にか一週間が過ぎてしまった。何をしていたのだろう。とにかくバタバタと忙しかったのはまちがいない。
 ここんとこ、立てつづけに “振られた”。といっても、いわゆる男女のアレではない、残念ながら。日本語授業の話しである。
 まずはピンチヒッターで出かけたちょっと遠方の教室。
 2人か3人は来る「ハズ」だ、といわれていたのだが、事前にその「ハズ」にもっと注意をはらっておけばよかった。あの日は天気がよかったから、学習者も勉強どころではなかったらしい。
 もう一つは個人レッスン。生徒は、まじめなベトナム女子。休む場合はいつも連絡をくれるのでおかしいなと思っていたら、風邪がひどくてそれどころではなかった、という連絡をあとでもらった。
 彼女が実習生として働いている食肉加工会社は、このあたりでは老舗の中堅ブランドとして有名である。
 しかし、彼女や同じベトナム人同僚からうかがい知るかぎりでは、どうも「ブラック」のようである。
ブラックどころか漆喰の闇である。とくに外国人実習生への待遇がひどい。
 何とかしてあげたいが、へたに正義感を発動して事を表沙汰にすると、実習生たちを窮地に追い込んでしまうからやっかいだ。
 彼らは、送り出し機関や受け入れ機関、ブローカーなどとの契約でがんじがらめになっているので、本気で何とかしようと思ったら、実習生自身とこちら側が多大な犠牲をはらう覚悟でのぞまないと改善しない。
 しかしそれはリスクが高いので、たいてい彼らは泣き寝入りするのである。
 まあひどい制度である。低賃金の3K労働でこき使われた彼らは、堪え忍んで年季が明ければいくばくかのお金が得られるが、それと同時に日本や日本人への良き思い出を懐に本国へ帰る、とはとうてい思えない。
 それがはたして国益にかなうことなのか。
 僕の生徒は有給を取ることも認められず、あきらめた様子で次の日も出勤したようだ。
 現代の「女工哀史」は身近に存在する。(-_-#)
(photo:芽吹きが待ち遠しい)