新幹線の0番チケット

 2番ではだめなんですか、といった国会議員がいたけれど、やっぱり人は1番が好きなようである。
 北陸新幹線の開業1番電車のチケットが、瞬時で売り切れたそうだ。いやいや、そのこだわり、恐れ入る。
 他人に先駆ける、というのはたしかに気持ちがいい。しかし、自分の実力で勝ち取ったものなら価値があるが、早い者勝ちや要領がよくて手に入れたものに価値があるとは思えない。
 まあ、価値観は多様だから、それはそれで尊重しようと思う。
 しかし僕は、フライングをしたのである。じつは、試乗会に行ってきたのである。しかも大きな声ではいえないが、招待枠で試乗してきたのだ。
 沿線住民、ということで町内会に招待状が来たのである。もちろん、「役得」とばかりに、秘密裏に乗ってきたわけではない。町内会の人たちといっしょに参加してきたのである。
 一般公募が何十倍かの倍率だったことを思うと、多少申し訳ないような気もするが、沿線住民として工事に直接間接に協力してきたことを思えば、それくらいよいではないかと思う。
 僕たちが乗った電車は、金沢駅から上越妙高往復のコースで、行って帰ってくるだけだから、ものの2時間でミッションは終わった。
 新しい路線だから車窓からの景色は新鮮だが、山間部はほとんどトンネルなので、既存の新幹線同様速すぎて旅情味には欠ける。
 時速200kmを越えると、風景が脳に定着しないようだ。個人差はあると思うが、僕はダメである。
 以前も書いたが、新幹線は移動の手段として割り切るのが正しい利用のしかただろう。在来線特急と比較しても、座席の居住性がいいとは思えない。普通席の場合だがーー。
 で、とりあえず開業1番電車より先に乗ってきたわけだが、準備段階のいわば0番電車に相当するので、優越したとくべつな意識はまったくない。
 さて、新幹線開業と同時に在来線が切り捨てられる、というか、JRから経営が分離される。
 僕はそっちのほうが心配だ。不便になるのは目に見えている。韓国や台湾のように、新幹線が開通しても在来線はそのまま存続してほしいのだがーー。
 新幹線網が充実すると東京へ出るには便利かもしれないが、地方から地方への移動が不便でしかたがない。(;。;)
(photo:車内。飲食禁止)