とある神社へおもむく

 禁断の果実。その甘美で魅力的な味は、一瞬のうちに人を虜にさせるーー。
 一度でいいからそんなものに出会いたい。いや、出会いたくない。身を滅ぼすことがわかっているうちは、刹那的にはなれない。
 などと、おおげさにとらえる対象でもないか……。
 ーー靖国神社へ行ってきた。
 けっこう大きい構えである。鳥居のばかでかさ。参道の広さと奥行き。へぇ〜これがアベシンゾーたちがこよなく愛し精神のよりどころとするところか、と。
 晩秋の土曜日、ごくふつうの休日だったが、かなりの人出である。老若男女、みんなどういう思いでここへ参りにくるのだろうか。
 ふつうでない人たちをどこかで期待していたが、見事に裏切られた。ふつうの日だからふつうの人たちばかり……それも当然か。
 敷地内にある「遊就館」という資料館に入ってみた。入場料大人ひとり800円なり。ちと高くはないか、と一瞬躊躇する。
 しかし、もう来ることもあるまいと思い、英断した。いや、800円に「英断」はちとおおげさか。
 英霊のご遺書やご遺品をはじめ、その「みこころ」や「ご事蹟」を今に伝える貴重な資料館らしい。
 なるほど、これはすごいわ。お金かかっとる。見事だ。あっぱれ! 1時間や2時間ではとても見てまわれないくらいの充実ぶりだ。
 これでもか、という物量作戦ーー。物はちがうが、たしかアメリカにはこれでコテンパンにやられたのである。そのおかげで、今なお連中の属国あつかいだ。いや、我が国の属国根性か……。
 それはまあ、さておく。
 おどろくべきは、これらを展示し支え支援する勢力である。一方的な視点でよくもまあここまで……。その情熱とパワーには、恐れ入った、ほんと。
 800円は高くなかった。これほどのものを見せていただいて、まったく英霊に感謝するしだいだ。
 ぽかぽかと暖かい土曜日だった。神社の境内を出て、はじめてそれを感じた。現実にもどった。
 禁断の果実は、禁断でもなんでもなかった。ひどく苦くて、そして悲しいものだった。(; ;)
(photo:とある神社の玄関口)