奇妙な際会

 引っ越しできない隣人同士、男Jと男Cとの会話である。
 「オレの世になってからずいぶん経つが、これまで一度もニーハオがなかった。その間、戦犯を紙、いや、神として奉ったあの神社へ参ったり、我々を敵視してまた戦争ができる準備をしているようじゃないか」
 「我が国のために戦った先人たちに対して、尊崇の念を表することはあたりまえだ。あなたがたこそ、我が国固有の領土に無断で侵入し我がもの顔でふるまう。最近では、希少資源の赤サンゴを根こそぎ盗る傍若無人。恥というものを知らないのか」
 「我が国民は、『赤』には弱いんだよ。産後(サンゴ)は大事、ともいうしな。しかし、オレを無視して世界中を飛びまわっているようだが、身体は大丈夫か? 最近顔色が悪いじゃないか」
 「政府専用機は古くて乗り心地がいまいちなんだ。まあ、そんなことはどうでもいい。あんたがたこそ世界中で、金にものをいわせてあらゆる資源を独り占めしようとしている。世界中から嫌われているのを知らないのか」
 「ふふ…あんたらもかつてそうだったじゃないか。オレたちがやっていることなんか、ノーベル平和賞をもらった、あのふざけた大統領の国がやっていることにくらべればたいしたことはない」
 「ボスを侮辱するのは許さない」
 「ポチはつらいだろう。同情するよ。しかし、急にニコニコしてオレに近づいてくるのは気持ちが悪い」
 「口角を上げる練習をしただけだ。わたしは、扉は開いている、といつもいっていたじゃないか。しかし、いつまで待っても何の連絡もないから、しかたがない」
 「いよいよ手詰まりなんだろ? 景気対策も怪しくなってきたしな。中国製の矢にすれば成功したはずだ。しかし、オレは口角を上げんぞ」
 「まあいい。ここらで一度会おうじゃないか。アキエも連れて行く」
 「アキエ? サキエさんなら知っているぞ」
 「アキエはわたしの妻だ」
 「冗談だ。それくらい知っている。APECだし、世間体もあるから会ってやろう」
 「シエシエ。これで選挙に勝てるかもしれない。お土産は何がいい?」
 「きまっている。赤サンゴだ」(*_*)
(photo:ここのスタバは全国でも有名。富山環水公園にて)