邦画と新たな萌芽

 今年の日本映画界の興業収入は、ディズニーの『アナと雪の女王』一人勝ちで終わりそうだ。ついでにいえば、興収第2位は『マレフィセント』。こちらもディズニーである。
 日本で荒稼ぎができて、あの会社も笑いが止まるまい。
 『マレフィセント』は見ていないが、『アナ雪』は良くも悪くもディズニーである。しかもなぜか、日本人にバカ受けした。
 松たか子や神田沙也加など、吹き替えキャスティングの勝利といっても過言ではない。
 しかし、洋画の実写映画がふるわない。ハリウッドの企画の貧困化や、CGや3Dに観客が慣れてきたことも原因だろう。
 一方、邦画は近年元気である。しかし稼ぐのは、ドラえもんやコナンなど、あいかわらず子ども向け定番商品だ。
 さらに最近の傾向は、漫画を原作にした実写映画が多いことだろう。『ホットロード』『近キョウリ恋愛』『銀の匙』『俺はまだ本気出してないだけ』『忍たま乱太郎』『ルパン三世』……など、数え上げればキリがない。
 たとえば、小説を原作とした映画では、読者個々がイメージしたその物語世界と映像とのギャップを、いかにして最大公約数的に埋めるかが成功のポイントであろう。あるいは、骨組みだけ活かして大胆に脚色する場合もあるがーー。
 しかし漫画の場合は、ひとつの具現化されたイメージが存在するので、映像化しやすいかもしれない。その分、原作漫画ファンからははっきりとした評価が出るはずである。
 先ごろ封切られた『ふしぎな岬の物語』(成島出 監督/2014年)という映画は、森沢明夫の小説が原作である。外国の映画祭で賞を取ったことや、吉永小百合が制作にかかわったことで話題となっている。
 僕は原作を読んでいないので何の雑念もなくこの映画を観たが、全体をつらぬく背骨のようなものが感じられず、見終わったあと何の感慨も残らなかった。
 どうしてそういうふうに感じたのか、原作を読んでみないとわからないが、ここにある種原作物の難しさ、というものがあるのだろう。
 ついでにいえば、出演していた阿部寛笑福亭鶴瓶竹内結子笹野高史など芸達者な俳優陣がもったいなく感じた。とくに、米倉斉加年は遺作としての役柄があまりにも軽い。
 さて、原作物は映画化のひとつのアプローチだが、見渡せば、オリジナル脚本によって作られた映画が非常に少なくなった。
 そんな状況のなか、洋画の貧困さの裏返しとして邦画がにぎわっているように見えるが、内容が充実しているとはけっしていえないのである。
 映画は世界中で作られている。途上国といえども制作レベルが上がり、良質な映画がたくさん制作されている。たとえば、『めぐり逢わせのお弁当』(リテーシュ・パトラ監督/2013年/インド)のように……。
 『アナ雪』もいいけれど、世界の映画はもっと多様である。映画から見える世界情勢はとても貴重だ。それは、ニュースからは伝わってこないのである。(^_^;
(photo:姫路城にて。2012年)