「山が動いた」

 加賀白山(2,702m)の頂上から遠く富士山を望むと、ちょうどその中間あたりで、立ちはだかるように自己主張する山がある。
 ーー御嶽山である。同じ独立峰でも富士山のように秀麗ではないが、ゴツゴツした上部の独特な形と、山塊のどっしりとした姿はとても印象的である。
 「休火山」とされていたが、1974年秋に突然噴火したときもおどろいた。ちょうど1〜2週間前に、登山ではないが、開田高原へ遊びにいったのである。
 今回の噴火では多くの登山者が噴火に巻き込まれ、大惨事の様相を呈している。同じ、山に登る者として被害に遭われた方はほんとうに気の毒であり、亡くなられた方たちのご冥福を祈らずにはいられない。
 あらためて、自然の力というか、地球の胎動を感じる。
 昨今は、地球の温暖化にともなう気候の「変動」などが指摘され世界中で災害が起こっているが、地球自身にしてみればそれは「変動」などではなく、たんなる生理のサイクルにすぎないのかもしれない。
 今まで静かだった山が、突然噴火する。「山が動いた」といってもいいくらいである。
 そんな名言を残した名政治家が亡くなった。土井たか子氏である。
 憲政史上初の女性党首として、行き詰まった社会党を立て直し、社会党最後の隆盛をもたらした立役者である。
 晩年は政治の世界から距離を置いていたようだが、護憲勢力のカリスマのような存在を失ったことは、ほんとうに残念だ。
 彼女が活躍した時代には、保守勢力にも名物政治家がたくさんいた。ダーティなハトやクリーンなタカ、入り乱れて層が厚かった。
 しかし今はじつにつまらない。アベの党などは一色である。メダカ社会である。でも、うちで飼っているメダカはけっこう自由だが……。つまり、メダカ以下か……。
 紋切り的ないいかただが、ひとつの時代が終わった感がする。合掌。
(photo:天狗平からの立山遠望)