サハリンへ(2)
じつはサハリン(ロシア)上陸は、ビザ免除の特別入国なのである。したがって、個人行動は許されず、決められたコースの団体行動なのである。
ーーしかたがない。ぶらぶらと街を歩きたかったのだが、秘密警察につかまってシベリア送りになりたくないから、おとなしくしようと思った。
ロシアやソ連の歴史を少し知ると、「シベリア送り」がステレオタイプとなって脳裏をかすめるからいけない。とにかく、日本といまだ平和条約を締結していないのもおかしな話しだ。
まあそれはさておき、ユジノサハリンスクでは、聖ニコライ教会、サハリン郷土史博物館、レーニン広場を回った。
この中では、サハリン郷土史博物館が興味をひいた。建物自体が日本統治時代に建てられたものだそうで、ロシア人が支配する今のこの町では異彩をはなつ。
館内の展示自体はオーソドックスであり、とりわけ目玉展示があるわけではない。むしろ網走の北方民族博物館のほうが充実していた(くらべるのもおかしいが……)。
しかし、サハリンの歴史に日本がからんでいる、という事実をビジュアル的に学習できる施設として、やはり貴重だろう。
博物館では、日本語を話す若いロシア人ガイドが待ち構えていた。ガイドの名はエカテリーナ。ロシアでは一般的な名前だが、これがまたスラッとした美人なのであった。
聞けば、ウラジオストックの大学で日本語を専攻し、日本にも一年留学したことがある、という。やるではないか。
ユジノサハリンスクの人口は約18万人だ(2010年)。町並みがゆったりとしているせいか、人の往来がまばらに感じられる。集合住宅がほとんど、という事情もあって、日本の町並みとはずいぶん印象がちがう。
気候は、日本の晩夏からやってきた者にとっては、ここはすでに秋であった。それでもこの町の人々の意識は「夏」かと思っていたが、意外にも軽装姿は少なかった。
ミニツアーの最後には、おそらくこのツアー客のためだけに設けられた、殺風景な特設の土産物コーナーの会場に放り込まれた。
ボラれるのを承知のうえでテキトーに記念の土産を買い、退屈なので建物の外に出た。
あまり遠くに行かないように周囲を歩いたが、好奇心を刺激するようなものはなかった。せめてロシアの空気でも胸いっぱい吸い込んでみようと思ったが、かなり埃っぽいのでやめた。
時間になり、コルサコフへ戻るバスに乗り込んだ。車窓からは、戦車の基地のような施設も見られた。どこかの国の軍事オタク議員先生たちなら、小躍りしそうな景色だった。
そして、埠頭から再びテンダーボートでマザーシップに帰った。つかのまのロシアだった。
ーーさよなら、エカテリーナ(そっちかい)。(^_^)
(photo:ユジノサハリンスク市内にて)