日傘と帽子

 中国人は帽子をかぶらない。炎天下でも。
 女性はときどき日傘をさしている。ところが、男性でも日傘をさしているのを何度も見たことがある。
 しかしそれは、遠目にも日傘には見えなかった。雨傘である。オシャレを意識してというより、日差しに閉口してやむなく傘をさした、というところなのだろう。
 それでも、汗臭い兄ちゃんが日傘をさす姿は少し粋に見えた。あまり他人の目を気にしない、中国人ならではの行動である。
 中国人に触発されたわけでもないが、昨夏から僕も日傘を愛用している。さしてみると、これがすこぶる快適なのである。涼しいーー。
 帽子のように頭が蒸れないし、首筋や全身に降りかかる直射日光をさえぎることができるので、暑さも和らぐのである。
 だいたい、炎天下、オッサンがかぶっている帽子を見ると臭ってきそうではないか。着ている服のように頻繁には洗わないだろうし、髪につけている整髪料などを考えると想像を絶する。
 日傘なら、不要になればさっとたためばいいが、帽子はとると持っていき場に困るし髪の乱れも気にしないといけない。乱れるような髪があればまだいいが……。
 かように日傘を愛用するようになると、これまでの帽子一筋人生はいったい何だったのだろうか、と最近は思う。帽子に罪はないけれど、全日本男の日傘普及協会(実在未確認)はこれまでいったい何をしてきたのだろうか。
 しかしようやく我が国でも、男の日傘文化が芽生えはじめた。「男の日傘」という商品カテゴリーが出現してきたのである。
 めでたしめでたし、といいたいところだが、「男の」「女の」という冠詞がついている間はまだホンモノではない。
 と、全日本男の日傘普及協会(実在未確認)の手先のようなことを書いたが、日本帽子愛好協議会(実在未確認)と絶縁したわけではない。
 ま、使い分けである。(^o^)
(photo:七尾にて)