明るい日本の暗い世相

 思いもよらぬ事件や物騒なできごとが、ときどき世間を賑わせている。凶悪な事件が増えたね、とか、治安が悪くなったよね、とか心配する向きも多い。
 しかし統計的には、戦後一貫して凶悪犯罪は減っているのである。でも人々は、安心・安全がおびやかされていると感じている。
 日本に住んでいる外国人は、女性が一人で夜歩けるなんて信じられない、という。といっても、暗い夜道は一人で歩かないようにね、と、ご本人には釘を刺しておくが……。
 ともかく日本は、世界でもトップクラスの治安の良さを誇っている。
 宇宙から夜の日本列島を俯瞰すれば、そのままの形で光り輝いているらしい。周辺国よりひときわ明るい。日本は世相は暗いが、昼も夜も明るいということである。
 明るくすれば防犯効果があるかもしれないが、ときどき、明るすぎはしないだろうか、と思うときもある。もちろん人里での話しだが……。
 明るくてもコンビニ強盗は後を絶たない。もっとも、コンビニは営業しているから明るいのである。防犯のため暗くすればいいかといえば、それでは商売にならない。
 あれ? 夜が明るいか暗いかの話しになってしまった。どうして人々は、どこまでいっても安心できないのだろうか、という話しをしようと思っていたのだよ。
 で、マスコミから流れる情報がイメージを形づくる、ということもあるだろう。それは、政府の方針と密接に関係している。
 どこかの国からミサイルが飛んで来るとか、隣国の巨人が攻めてくるとか、そういう非現実的な不安が人々の日常生活に投影していくのである。
 いつの間にかそう思い込まされる。中国(人)や韓国(人)が嫌いだって? どうして? 個人的に何かされたの?
 ケンカしている友だちを助けないでどうする……って? 加勢するよりまず仲裁だろう。加勢すれば自分も攻撃されるんだぜ。
 我々の安心・安全を脅かすものの正体。夏の怪談より怖いのである。(-_-#)
(photo:ムシトリスミレ。葉に注目。五竜岳にて)