夏山と伏兵
山へ行った。2泊3日の山旅だ。しかも久しぶりの、夏の山小屋泊まりである。
この時期の3,000m級の山は高山植物が咲き乱れ、涼しくて快適なのである。ところが山小屋は、中高年男女の欲望が咲き乱れ、阿鼻叫喚地獄絵図なのであります。
そんな時期にわざわざ……と思ったが、今年は海の日の連休明けがチャンスになる予感がして、思い切って出かけたのである。
山小屋泊まりは、ちゃんと寝られるかどうかが勝負となる。睡眠不足では行動にも支障をきたすし、だいいち身体がつらい。生死にかかわる場合もあるから、山小屋の一夜は重要なのである。
神経が太いロープでできているんじゃないかと思われるような、「どこでも熟睡」の方もたまにおられる。そういう人に限って、周りに寝不足というダメージをあたえるのである。
タタミ2畳に3人、という “収容所” を幾度となく経験した結果、夏山には近寄らず、という結論を近年になって得た。
若いうちなら “収容所” も難なくクリアできたが、このトシになるとさすがに対応不可となった。バージョンアップができなくなった機種のようである。
今回は、八方尾根から唐松岳に上がり、五竜岳を回って、遠見尾根を下るコースを歩いた。
登山者はかなりあった。しかし、山小屋はねらいどおり余裕だった。チングルマやハクサンイチゲ、ムシトリスミレやコマクサの群落を見ることができた。
やはり夏山の盛りは色彩も鮮やかに、生物の多様性や生命の躍動を身近に感じることができる。
しかし誤算があった。これまで経験したことのない足の筋肉のつりや痛みを感じて、一瞬動けなくなってしまったのである。
十分といえないまでも、ある程度トレーニングをしてきたつもりだったのだが……。ショックであった。心が、ポキリと音を立てて折れた。
伏線はあった。忙しいのもあって、一週間ほど前から準備運動がストップしていたせいだろう。さぼれば元にもどるのは冬の日の暮れより早い、ということを思い知った。
まあ、自分にいい訳をしてもしかたがない。山小屋の心配にうつつをぬかしていたら、思わぬ伏兵が現れたのである。(^_^;
(photo:唐松岳から五竜岳への稜線にて)