「ゴ」と「キラ」に思う

 ブータン人は日常的に、男性は「ゴ」、女性は「キラ」という民族衣装を着ている。日本の着物に似たアレである。
 強制ではないらしいが、用事向きや訪問先によっては民族衣装の着用がドレスコードとなっているらしく、結局は身に付けることが多いようである。
 首都ティンプーを歩いていると、国の中心だからとくにそうなのかもしれないが、街行く老若男女のほとんどが民族衣装姿である。
 男の「ゴ」は、長さが膝ぐらいまでなので、さながら丁稚奉公の小僧のようである(べつに揶揄しているわけではない)。
 この時期はまだ寒いせいなのか、たいがいの男はハイソックスでオシャレをしている。紺のハイソもよく見かけるが、どこかの国で一時期流行った女子高生のようである。
 ゴの生地や色使いは多彩だがスタイルが同じだから、見慣れてしまうと平均化したイメージになってしまう。
 その分、男たちは足もとで勝負しているような感じもうける。ハイソックスに靴、さすがに運動靴は見かけなかったが、彼らの靴をチェックするのも楽しい。
 女性の「キラ」も同様である。こちらは足もとまであって長いので、見た目日本の着物のようである。
 しかし、寒さ対策にセーターやダウンジャケットをはおっている姿を見ると、なんだかミスマッチのような気がしないでもない。
 オッサン的な感覚かもしれないが、あまり女性っぽさが表出しない衣装だな、とは感じるのである。
 何もチャイナドレスのようにスリットを入れろとか、アオザイのようにセクシーに、とはいわないが、せめて女らしさを意識した衣装にマイナーチェンジしてほしいな、とふと思う。いや、強く思う。
 さすれば、世界中からもっと観光客が押し寄せるにちがいない。……いやいや、それも困るから「公定料金制度」を取り入れているのだろうけどね。
 まあ、我が国のように民族衣装が絶滅の危機に陥っていることを思えば、ずいぶんと思い切った政策ではある。
 たとえば、懐古趣味のアベシンゾーが、日本国民は着物を着るべきでごじゃます、などといえば秘密保護法案のときよりも大規模なデモが起こりかねないだろう。
 しかし、ゴやキラを着た人々が、首都ティンプーのメインストリートを歩く姿をはじめて目にしたときは、ちょっと異次元感覚に陥った。(^_^;
(photo:ティンプーの人々)