ユニークなブータンシステム

 九州の人口は、だいたい1,400万人である。沖縄や島々を除いた九州本島だけなら、1,200万人ぐらいだろうか。
 ブータンは、その九州本島と同じ面積の国土に75万人(2014年推定)ぐらいの人々が住んでいる。ちょうど高知県の人口と同じである。
 一昨年来日したワンチュク国王夫妻が日本でも有名だが、じつはブータン立憲君主制であり、首相をトップにした政党政治体制である。
 とはいえ、民政に移行してまだ間もないせいか王族支持者も多く、とくに現在の若い国王夫妻の人気は圧倒的である。
 国は長らく鎖国政策をとってきたため経済発展がおくれている。インフラ整備もこれから。農業以外主要産業もなく、世界最貧国のひとつにあげられている。
 しかしそのぶん手つかずの自然や文化が残されており、近年は世界中から注目されている。
 とはいうものの、入国・観光事情はやや特殊である。
 原則的には、パッケージ旅行しか認められていない。しかも3人以上のグループが基本である。個人でも可能だが追加料金が必要となる。
 そのパッケージの基本となるのが、「公定料金制度」である。
 たとえば3月ならば、1日あたり$250(1人)換算で滞在日数分を、事前にブータンの旅行社に振り込む必要がある。入金が確認されるとビザが発給されるシステムである。
 $250のなかには、宿泊、食事、車、運転手、政府登録ガイドの費用がパッケージされている。つまり、現地費用のほとんどが含まれているというわけである。
 しかし、それにしてもちょっと高い。無分別に誰でも入国させたくない、ネパールのように外国人に国土を荒らされたくない、というねらいは理解できるし、このサイズの国の貧弱な国力ではそれもやむをえないのかもしれない。
 そして、経費の内訳がわからない。たとえば、ホテルにはランクがあるだろう。車の状態、ガイドや運転手のレベル、食事内容、些細なサービスなどなど、旅行社の力によって差があっては、困るのはツーリストである。
 日本人の入国者数はトップクラスだそうである。とすると、日本語ができるガイドもかなり存在するだろう(残念ながら、僕たちの旅行社は英語だった)。
 ブータンのパッケージシステムに従えば、これほど楽ちんな旅行はない。しかし、ひとたび勝手気ままに歩こうとすると、その窮屈感を知ることになる。街をぶらぶらする程度なら許されるが、たとえば、ガイドが随行するような施設には勝手に入れない。
 つまりは、ガイドの目が届かないような行動は好まれないのである。トラブルが発生したときには、ガイドの責任問題になりかねない。お客様の安全・安心のために……なんて。
 まあいいかえれば、外国人が勝手なことをしないように監視している、ともいえるのである。
 かようにユニークなブータンではあるが……(O_O)
(photo:首都ティンプーにて)