冬の暑さ

 家族の用事で札幌にきている。寒い。今日の最高気温は−2度である。
 こちらの人は、これでもあたたかいという。からかわれているのか、と思いたくなる。とにかく、寒風に耳が持っていかれそうである。
 札幌の寒さを想定して、北陸ではよほど寒い日しか着ない、ぶかぶかのダウンジャケットを持ってきた。
 しかし、街行く人たちにさほど重装備な姿は見られない。スーツ姿で歩いているビジネスマンや、素足をほっぽり出して歩く女性をよく目にする。
 寒さに対する感覚がちがうのだろうが、僕にしてみればここはまだ厳冬期である。ダウンジャケットは正解だった。
 ところが一歩建物に入れば、そこは快適な別世界である。北陸の建物のなかのような中途半端なあたたかさではなく、きっぱりと徹底的に隅々まであたたかい。
 というか、ときには暑いくらいなので、へたに厚手のセーターを着てきたばかりに、がまんしていると汗だくになってしまう。
 北陸の寒さの延長で考えていた自分はおろかだった。たぶんシベリアへ行くときは、根本的に防寒対策を考えないといけない。というか、シベリアへ行く予定はないけれど……。
 結局、札幌の屋外は寒いけれど、総合的には北陸金沢よりあたたかい、といえそうである。なにしろ、四肢の末端がすぐに冷えてしまう僕の足は、ふしぎなことに札幌ではホカホカなのである。
 数年前、1月に香港へ行ったときもふしぎな光景を目にした。
 日本よりずいぶん南に位置するとはいえ、あそこもその時期は少し寒いので、薄手のセーターを持っていった。
 国際都市・香港は、いろいろな国や地域の人たちが街を歩いている。だから、そういう中途半端な気候のときに目にする人々の服装は、Tシャツ一枚からダウンジャケットまで見られ、季節感をとらえるのが困難だった。
 外に長時間いないかぎりは札幌も快適だが、屋内外の温度差は慣れないとやはり、環境適応力が衰えた身にはつらいものである。~_~;