髪はときどきがまんできない

 不毛の地が増えたとはいえ、面積でいえばまだまだ圧倒的に存在しているわけである。ただ、目立つ部分が喪失したにすぎない。だから、伸びるとある時期から急にうっとうしくなる。
 ーー髪の話しである。
 あたたかい日をえらんで床屋へ行った。これですっきりすると思うと、足取りも軽く心がはずんだ。
 ところがなじみの店に行くと、主人はインフルエンザでダウンしていて、併設の美容部の店員に、一週間ほど待ってほしいといわれた。
 この手の用向きは、坊主頭にするなら別だが、なかなか他店の敷居はまたぎにくいものである。
 なんだか一気に、伸びた髪が重く感じ足取りまで重くなったが、来週出直すことにした。
 あたりまえのことだが、物を買いに行くのとちがって、こちら(客)の希望どおりにいかないこともある、ということをあらためて認識した。
 と同時に、長い付き合いになる床屋の主人に、お見舞いのことばひとつ残さなかった自分を反省した。落胆が大きかったせいなのかもしれないが、なんとも薄情な男である。
 ときどきいろいろな場で、客と店員、利用者と係員がトラブルを起こしている場面に遭遇することがある。
 そんなときは、サービスを提供する側が平身低頭する場合がほとんどである。多少客や利用者が理不尽でも、双方がいい争うことはまずない。
 上下関係が意識されているのだろうが、本来は対等であるべきである。
 「お客様は神様」という考え方はある意味正しいが、関係の上下や主従をもとめるものではない。
 顔見知りの商店主に、客だからといって怒鳴り散らすことなど、まずできないだろう。それは、見知らぬコンビニのバイト店員、図書館の係員だって同じ事である。
 さて、昨今の政府や政権与党の方々は、我々国民をどうとらえているのだろうか。どうも、中学校で習う「主権在民」ということばを、まったく忘れておられるようだ。(-_-;)
(photo:にゃ〜)