イワシとマグロ

 2013年も大詰めを迎え、ちまたでは「今年の十大ニュース」などが取りざたされている。
 ときどきは、なんでこれがベストテンなのか、と思えるものもあるが、それは選ぶ側の主観だからしょうがない。個人的には、11番目はいったい何だったのか、ということが気になったりもする。
 先日、師走だから外国人日本語学習者にそういう話題をふった。留学生はけっこうバラエティに富んだ話しをしてくれたが、企業実習生はだいたいにおいてメリハリがなかった。
 実習生は総じて淡々とした毎日を送っており、起伏のない一年を過ごしたようである。
 それは、「実習生」という制度に問題があるのは確かである。……これについては稿をあらためる。
 とにかく彼らには、置かれている過酷な状況と、少しでも金を稼ぐという目的のためにひたすら我慢を強いられている、という現実がある。
 で、外国人から、「先生はどうですか?」などと逆に聞かれたりする。しかし、生徒に聞いておきながら自分が問いかけられると、つい答えに窮してしまうのである。
 今年はどうしても、笑って年末を迎える気分ではないからである。
 何も自分が天下国家を背負っているわけではないが、授業の場であまり暗い話題を出したくはないので、「まあ、キミたちとこうして知り合ったことがニュースのひとつだよ」、などと歯の浮くような逃げをうってしまうのである。
 もっとも、それはウソではない。ベストテンかどうかはべつとして、秘密保護法がどうのこうのとか、原発再稼働はいかがなものかと正直に吐露したところで、彼らにそのことを伝えるのは至難である。
 彼らの日本語を早く上級レベルまで引き上げて、そういう話しもしてみたいのだが、なかなか難しい。若い彼らは、上達すればしたで日本の若者同様、オッサンと興味の対象がちがうので、どのみち話しが合わない。
 そんなわけで、自分自身の一番ニュースは何だろうかーー。
 イワシの群れのなかに、マグロはどうやら混じっていないようである。(;_;)
(photo:金沢市の普正寺の森にて)