不気味な足音
日中戦争や太平洋戦争からの敗北から、日本は驚異的なスピードで復興し民主主義が浸透する国となった。
もちろん単純に発展してきたわけではなく、紆余曲折のすえに、全体としてより良き社会を実現してきたわけである。
そのときどきに不満や怒りがあったとしても、先を見ればなんとなく明るい光があった。これまで手に入れたものはなくなりはしない、と思っていた。
ところが、民主国家の「繁栄」という山を登っていたつもりが、いつの間にか「衰退」という下り道を歩いていた。
息を切らせあえぎながら登るより、下るほうが楽である。たいていは同じ距離を、登りの半分の時間で下ることができる。
坂道を転げ落ちるように、といういいかたがあるように、昨今のこの国の失政を見るにつけそんなことを感じてしまう。
繁栄や発展のなかにいると、それが永遠につづくとは思わないまでも、少なくとも近代社会は「成熟」に至るハズだと思っていた。
しかし、歴史をふり返ればそのことに疑念がわいてくる。はたして人間は成熟してきたのだろうか、と。
「日本人は平和に飽きたのではないか」ーー。
もうすでに10年以上前になるが、夜のニュース番組の、かつてのカリスマキャスターが、何かの折にポツリとコメントしたことばである。
デフォルメされた刺激的な言説ではある。しかしほとんどの国民は、平和がいいと思っていることにはまちがいない。
ただ、そういわれてもしかたがないような人たちが存在し、力を持ってきているのも事実である。
ーー僕たちを展望のいい山から引きずり下ろす、特定秘密保護法案が衆議院で強行採決された。まったくデタラメである。
沖縄のことをつづけて書くつもりだったが、不気味な “黒い物体” に割り込まれたような気分だ。(-.-#)
(photo:普天間の町と米軍基地)