10万円の問題

 我が家は代々浄土真宗門徒である。といっても、常日ごろそういうことを意識したことはない。まあ、ばちあたりかもしれないな。
 いかに宗教とはかけ離れた生活をしているかということだが、それは日常的に宗教を必要としていなかったといえるし、浄土真宗界が門徒を惹きつけるような活動をして来なかった、ともいえる。
 じつは先日、我が家が門徒になっている寺から「ご案内」が届いた。内容はかんたんにいえば、親鸞上人七五〇遠忌につき寺の大改修をしたい、とのことであった。
 由緒ある寺なのである。寺側にすれば、あちこち傷みが目立ってきたので、これを期になんとかしたい、という思いがあるのだろう。
 気持ちは十分わかる。そう聞かされれば、信仰心のうすい僕も憂い悩む。
 しかし、お金がかかるのである。ワリと大きな寺なので、総事業費もかなりの額になるようだ。当然、門徒篤志を求めるわけだが、その額一口10万円と記されていた。
 う〜ん、じつはこれを見て固まってしまった。10万円という額もさることながら、寺側のこのノーテンキさにしばし思考停止してしまったのである。
 寺のほうからはときどき、いろいろな名目で布施をもとめられる。定期的なものもあれば不定期な件もある。しかしそれは、ある程度「会費」のようなものと思って快く応じていた。
 ひねくれたいいかたをすれば、寺からの「ご案内」はありがたくないものがほとんどである。役所からの通知と似ているかもしれない。
 このご時勢、計画どおり資金が集まるものだろうか。集まってほしいとも思うし、集まらないほうが寺のためかもしれないな、とも思う。
 うちなどは不良門徒で帰依とはほど遠いが、そういう不真面目さが許される浄土真宗の「ゆるさ」もまた嫌いではない。
 でも、僕が日本語をおしえている外国人実習生のほとんどは、1ヶ月必死で働いても10万円もらえないのである。
 実習生の問題はまたいつか書きたいと思っているが、この10万円はかなり重い。(*_*)
(photo:この寺ではありません。これは福建省泉州市真武宮)