北アルプス発見伝(2)

 北アルプスがあれば、南アルプスがある。ついでに中央アルプスというのもある。じつはそれぞれ、飛彈山脈、赤石山脈木曾山脈のことである。
 なんだかこの名前、社会や地理の授業を思い出すような懐かしさを感じないだろうか。あるいは人によっては、何か苦い思い出がよみがえってきたりするだろうか。
 アルプスというのはヨーロッパのあの有名な山域のことだが、イギリス人鉱山技師、ウィリアム・ゴーランドが日本列島の中央を走るその山脈群を見て「日本アルプス」と呼んだ。
 本家「アルプス」に因んだネーミングだが、意味するところは、アルプス「のような」である。ま、ニセモノというわけである。また、「北」とか「南」、「中央」は、後に登山家の小島烏水がネーミングしたようである。
 西洋文化をありがたがる傾向は明治維新以来なので、この呼称は日本人にはさして抵抗もなく受け入れられたようである。というか、むしろ歓迎されたのではないだろうか。
 そういう例は「アルプス」に限らず我が国ではかなりあるとは思うが、残念なことに、あちらで「イギリスの京都」とか「フランスの熱海」などと呼ばれているところがある、ということはきいたことがない。
 そういえば、「東洋の魔女」というのもあった。そうすると、「西洋の雪女」などというのもあっていいんだがなぁ。なぜ雪女か……それはここでは述べない。
 いずれにしろ、北アルプス南アルプス中央アルプスという呼称は定着してしまった。飛騨山脈赤石山脈うんぬんでは、やはり具合が悪いからだろう。
 それらは地質学上の名前であり、地域もあらわすことになるのだろうが、やはり北アルプス南アルプスのほうが使い勝手がいい。
 これから飛騨山脈に行ってきます、では、山登りじゃなくて地質調査に出かけることになってしまう。
 平成の大合併山梨県に「南アルプス市」という自治体が生まれた。これはスイスに「赤石市」という町ができることに等しい。スイス国民は絶対にそんなネーミングを採用しないだろう。たぶん。
 ーーなかなか山行の話しに進まない。また、つづく、である。(-。-;)
(photo:何の実か特定できず。鏡平にて)