北アルプス発見伝(3)

 数年前、9月の連休に西穂高へ行ったときは、ひどい目に遭った。
 ーー山小屋である。同行者が勤め人だったので、休日を利用するしかなかった。それでもタカをくくっていた。9月を甘くみていた。文字通り、そこは「収容所」だった。
 そんな事態をさけるために、今回は3連休の最終日から山に入ることにした。コースは新穂高から双六岳(2860m)往復。健脚なら1泊2日のコースだが、最近足を痛めた連れ合いの状態を考慮して、大余裕の2泊3日とした(それでも文句たらたらいわれたが……)。
 朝の新穂高の登山者用無料駐車場はほぼ満車だった。しかしどうにか、すでに下山した登山者の空きスペースをみつけて車を駐めた。
 身支度をととのえ歩きはじめる。温泉街を抜けて林道に入ると、路肩にはびっしり車がならんでいた。延々とつづき、ついには林道遮断ゲートまで達していた。
 正直かまえて駐車場に入れたが、なんだか損したような気分だ。まあしかし、こんなことで損得勘定する我度量の小さいことよ。と、しばし反省。
 ゆるやかな登りの林道を歩く。連休最後の日なので、途切れることなく下山者とすれちがう。林道を1時間あまり、登山道に入ってからもしばらく下山者はつづいた。当然、連休中の山小屋の混雑が予想された。
 僕たちの行程は、初日は鏡平まで約5時間半。2日目は双六岳まで約3時間半。最終日は双六小屋から一気に下山、という予定を立てた。
 このコースは、槍・穂高連峰の恰好な展望プロムナードである。とくに双六岳は、縦走コースとしては迂回ルートになるので訪れる登山者も少なく、静かに楽しむことができる。
 頂上では、裏銀座と呼ばれる北アルプスの山々(黒部五郎岳鷲羽岳水晶岳、赤牛岳など)がパノラマのように見渡すことができ、至福のときを過ごした。
 今回の山行では、単独女子がたくさん目についた。なかには、テント泊らしく、大きなザックを背負って歩くたくましい女性も少なくなかった。恐るべし、である。
 「山ガール」はほんとうだった。そのファッションも洗練されていた。スカート姿(山用だが)も見かけた。もちろん単独「山ボーイ」もいたが、こちらは年齢層が高かったような気もする。
 なんだか日本も捨てたものじゃない。パワフルな若い女性が台頭している。女性を「活用したい」などとのたもうているアベちゃん、それが本気ならもっと大胆な政策を打ち出してはどうかね。もちろんJ民党の右翼女子はいらないけどね。
 ーー紅葉のきざしがほの見える9月の北アルプス。すっかり、9月の山ファン、になってしまった。
 女子が多かったわけではない。なにより、空いている山小屋は飯は豪華だし、専有スペースも十分。トイレは好きなときに使えるし……。
 しかし、山小屋のトイレも改善されたものだ。少量の水で水洗できるような工夫がなされ、たまった糞尿はカセット式で、定期的にヘリで下界に下ろしているようだ。昔のように、ポットンそのまま地下浸透式、というところはなくなりつつあるようだ。
 山の世界も移り変わっている。新しいウエアがほしくなった。(^_^)
(photo:双六岳山頂から鷲羽岳水晶岳方面)