入籍は結婚なのか?

 いつからこういうことばが流行しているのだろう、と思うことが、テレビを見ているとときどきある。インターネットでも見かける。
 たとえば、ずいぶん前から気になっているのは、「入籍」ということばである。
 タレントや有名人が、「本日入籍いたしました」という。ときどきご丁寧に、「入籍させていただきました」などという。
 べつに頼んだ覚えはないよ、と毒づきたくなるが、つまり「結婚」したことをそういうふうに表現することが流行しているらしい。
 しかし、彼らの意味するところの「入籍した」は、そのハッピーな状況から誤解を招くことはないかもしれないが、ことばの使い方として親切ではない。
 「入籍」は結婚にかぎらない。子どもが生まれて出生届けを出したのかもしれないし、養子縁組なのかもしれない。あるいは、離婚して戸籍が移ったのかもしれない。
 だいたい、諸外国にはほとんど例がない「戸籍制度」を持ち出すのはいかがなものか、と思う。
 外国人に理解できない「入籍」ということばは使わなくとも、「結婚」ということばなら、正しく誰にでも理解されるではないか。
 このままでは、中級以上の日本語学習者に、「入籍はmarriageですか?」とか「入籍と結婚はちがいますか?」、という質問をされそうである。
 せめて「本日婚姻届を提出いたしました」ではどうなのか。いや、この場合どうも世界的珍制度たる「戸籍制度」が見え隠れするからNGだろうな。
 すっきりと、「本日結婚いたしました」でいいではないか。おお、断然いいよ。この場合、「本日結婚させていただきました」といういい方にはならないだろうし。
 素直に祝福できそうである。(-。-;)
(photo:危険なやつ。キゴ山にて)