鳥と豚と人間と

 豚の死骸1万頭が河を流れてくる光景は、シュールを通り越して恐怖だろう。
 ーー先月、上海市の中心部を流れる黄浦江で起こった「事件」である。
 そして今回の鳥(豚?)インフルエンザ発生ーー。すでに中国では死者が出ているようだ。しかも上海近辺である。
 どうも臭いような気がする。……いや、豚の臭いではない。
 鳥から豚へ。豚から人へと、豚を媒介して人間に感染する。そのウイルスが人から人へと感染するタイプに変異すると、2009年に発生した「豚インフルエンザ(H1N1)」騒動の再来となる。
 しかし豚を媒介するとはいえ、今回はウイルスのタイプがちがうらしい。H7N9? いろいろ組み合わせがあるのはわかるが、問題なのは罹患した場合の症状と毒性の強弱である。
 今回のタイプはまずいことに、強毒性で症状が重くなるらしい。今後の動向には要注意だ。
 鳥インフルエンザの事例は世界中でたびたび発生しているが、感染がスポット的なため最近ではあまりニュースとして報道されていなかったように思う。
 しかしその間にもウイルスは、深く静かに人間のほうに向かって着々と変異している、と考えたほうがよさそうである。最悪といわれるH5N1型が、人人感染タイプに変異を遂げないことを祈るばかりである。
 なにせウイルスや病原菌は目に見えないからやっかいだ。やつらの姿が見えるメガネでもあれば便利だろう。まあ、ノーベル賞ものだ。でもそんな極小なものまで見えるとまた大変だよなぁ。
 とにかく、映画『アウトブレイク』(ウォルフガング・ペーターゼン/1995年)が現実になるのは困る。あれは「エボラ出血熱」というウイルス感染症をモデルにしたパニック映画だった。
 たしか、致死率ほぼ100%という強烈な設定だったが、その点『コンテイジョン』(スティーブン・ソダーバーグ/2009年)は、20〜30%という致死率が生々しく現実的だった。明らかに2009年に流行した「豚インフルエンザ」をモデルにしたようである。
 ーーさて、河を下ってきた豚はどこへ行ったのだろう。(・0・)
(photo:石川門。2009年)