大丈夫じゃない場合

 「千円札になりますが大丈夫ですか」ーー。
 コンビニで買い物をしたときに、小銭がなくて1万円札で支払ったら、店員がそういって千円札を数えはじめた。ーー背中がムズっとした。
 まず、「になります」。店員は手品でもするのだろうか。数えているのは千円札に見えるけれど、変身するのか? 
 それから、「大丈夫ですか」。……どう返答すればいいのだろうか? やっぱり手品で何か起こるのだろうか? その心構え?
 とまあ、そういう場面に出くわしてしまうと、僕は偏屈なオヤジ「になります」。
 この「になります」は、以前にも文句をならべ立てたので蒸し返さないが、最近は「大丈夫ですか」がどうも気になって、こちらの気持ちが大丈夫ではなくなってきているのである。
 ちょっといろいろなシーンで乱用されているとは思わんか?
 「このサイズで大丈夫ですか」「こちらの席で大丈夫ですか」「こちらにお名前を書いてもらって大丈夫ですか」ーー例をあげればいくらでも出てくる。
 しかしたとえば、前を歩いていた妙齢の女性がつまずいて転んだら、ツツと走り寄り「大丈夫ですか?」と介抱をする。
 あるいは、雪道にはまって抜け出せないでいるクルマに駆け寄り、妙齢の女性ドライバーに「大丈夫ですか?」と気遣う。
 韓流スターに熱狂するオバサンたちを見て、「大丈夫か?」とつぶやく。
 本来なら、このような使い方が正しい、というか一般的ではないだろうか。つまり、心配したり気遣ったりする気持ちを表現するとき(たとえポーズであっても)である。もちろん、妙齢の女性だけが対象ではないがーー。
 それに対して近ごろの用法は、相手にOKかどうか確認しているだけなのである。
 「千円札でいいですか」でいいのである。「こちらの席でよろしいですか」でいいではないか。
 最近では「◯◯様のお宅で大丈夫でしょうか」、という営業電話での接客例もみられるそうである。僕はまだ受けたことがないので楽しみにしているが、世の中そこまで進んでいるのである。(^o^)
(photo:コーヒータイム)