まくらについて

 「枕」は人生を左右する。といってしまえば、大げさだろうか。
 しかし、人間は一日8時間の睡眠が一般的だとすれば、人生の3分の1の時間を枕とともに過ごしていることになる。
 つまり、枕は生きていくうえで必要不可欠なアイテムであり、枕のない人生など考えられず、枕の良否が人生に多大な影響をあたえてしまう、ということになるのである。
 ことほどさように重要な、「枕」という物。おそらく、その方面の研究者が発表した論文が多数存在するはずである。
 たとえば、「枕を考える」「枕と人生」「人間と枕に関する一考察」「枕とわたし」「枕とは何か」「枕と枕ことばの関係性」「枕の将来はお先ま暗」……などという研究論文が、さがせばたちどころに見つかる……かもしれない。
 それで、その枕なんだが、最近自分のその “人生の友” が合わなくなってきたのである。弾力ある往年の姿は消え失せ、ぺったりと、まるで薄くなった頭髪のごとく意気消沈してしまったのである。
 あれはたしか通販生活で手に入れた、イタリアはファベ社のメディカル枕。やはり枕にケチってはいけないと思い、当時大枚をはたいて買った。
 ところが、枕は永遠かと思っていたら、ぺったりしたら買い換えなさい、と通販生活はいう。だまされた。と思っているわけではない。形あるものの運命だからしかたがない。
 しかし、ファベ社の枕にほおずりしたあの日から「失われた10年」、日本経済の浮沈と軌を一にするような我が身の零落。
 そして、新しい “人生の友” は1980円で手に入れた。とりあえずほおずりしたが、中の枕材がザリザリ鳴った。
 ーーたかが枕。されど枕。「ひざ枕」はうれしいが、「氷枕」はちと困る。ときには「枕を濡らす」日もあるが、せめて「高枕」で……ぐっすり眠りたい。(^_^;
(photo:親戚のロシアンブルー、Renくん)