不都合な初体験

 久しぶりにカレーが食べたいな、と思って行きつけの店へ行くと、休みだった。あるいは、今日こそ髪を切るのだ、と思ってなじみの理容店へ行くと、月に一度の火曜定休の日だった。
 などというのは、マーフィーの法則である。ときどきいろいろなケースで見事にひっかかるのである。
 ま、今日もそんな日だった。キーワードは「皮膚科」。
 行きつけのNクリニックは定休日だった。それがケチのつきはじめだったのかもしれないーー。
 それで、オプションとして用意してあったI医院へ向かった。そこは家族がときどき利用していたので、内部事情は少しわかっていた。だからあまり不安はなかった。しいていえば、医師が高齢ということだろうか。
 ところが医院が見つからなかった。該当地にまちがいはないと思ったので、行ったり来たりした。よく見ると医院らしい建物があった。その前には白く塗りつぶされた看板もあった。ーー不安が的中した。
 さて、I医院の場所をネットでたしかめたときに、ついでにTクリニックもチェックした。Tクリニックは行ったことがなかったが、皮膚科学会認定専門医という表示に訴えるものがあり、検索してみたのだ。
 これほど用意周到な自分をほめてやりたい、と自画自賛しつつTクリニック周辺まで来た。しかし、どうも見あたらない。もっと強く訴えてほしかったーー。
 クルマを幅寄せしてキョロキョロしていたらクラクションを鳴らされた。振りかえると、黒のワゴン車がピタリと張り付いていた。
 多少交通量はあるが、片側2車線である。通行を遮断しているわけではない。しかし、そいつが変なやつだと困るので、あきらめてクルマを出した。
 皮膚科たずねて三千里、もろくも夢は破れ去った。……夢とはちがうなぁ。
 ーーところで、どうして皮膚科か、って?
 じつは、水虫……のようなのである。水虫の症状は知っていたが、これまで好かれたことはなかったのである。はじめて体験した症状なので、シロウト判断はやめようと思い医者に向かったのだ。ほんとうさ。
 患部は、まだ右足の薬指と小指の間だけだからたいしたことはないが、かゆいのが困る。脂っ気に乏しい乾燥肌体質だったはずだが、いったいどこで菌をもらってきたのだろうか。( -_-)
(photo:冬の兼六園