鄭成功への旅のはじまり

 高速鉄道泉州駅から動車(中国の新幹線)に乗った。行き先は厦門(アモイ)だ。
 去年の浙江省での事故以来運行速度を落としているので、最高はせいぜい200km/hである。それでもアモイへは1時間足らずで着いてしまう。
 国際貿易都市アモイは、観光客にも人気である。日曜日だったせいか、あいかわらず駅から人でごった返している。
 アモイいちの人気スポット、コロンス島に渡る連絡船も行列である。船着き場では、異国情緒たっぷりのこの小さな島に入っている、今日の訪問者の数が電光掲示されている。現在約28,000人。
 あまり多くの人が入島すると、島が沈むのではないかといわれている。しかし、島に渡るまえに連絡船が沈むのではいかとさえ思えるような、船内は山手線なみのきゅうくつさだ。
 島が近づくと、突き出た岬から外海を見渡す大きな人物像が目に入る。それは、民族の英雄、鄭成功である。
 鄭成功は、明時代末期の武将である。清の台頭によってしだいに追いつめられる明を守るために、清と闘った中国の武将である。
 母親が長崎平戸出身の日本人であることから、彼の名前は日本でもよく知られているが、中国人は意外なことにその事実を知らない。
 コロンス島は彼のアモイでの最初の本拠地であり、なじみの深いところである。島の中心部には、功績をたたえる記念館がある。今日はそこへ向かった。
 じつは、今回の旅の目的のひとつは、この鄭成功という歴史上の人物を調べることにある。
 これまでも著名な学者や研究家、作家などによってこの人物を題材にした多くの著作が輩出されているので、今さら一介の凡市民ができることなどタカが知れているかもしれない。
 しかし、彼が活躍した本拠となった福建省に暮らしてみて、どうしても自分自身で足跡を検証してみたくなったのである。
 まあ、現地取材といえばきこえはいいが、物見遊山や趣味の域を脱していないところがシロウトではあるがーー。
 泉州の友人を通訳に介して、記念館の職員(学芸員?)に取材をこころみたが、そうするとあらためて自分の準備不足が露呈してくるのもいささか悲しい。
 ーー長い旅になるかもしれない。(;_;)
(photo:上は鄭成功像。下はコロンス島からアモイ本島を望む)