チャリの秋

 このところずっと冬型の天候だったためか、気分はすでに冬になっていた。早い冬の寒気のなごりをひきずっていたが、昨日の日曜日は久しぶりに晴れた。
 天気が悪かった土曜日の予定を順延して、サラリーマン時代の友だち2人と自転車ツーリングに出かけた。
 といっても、午後に用事をかかえていたので、ショートツーリングの散歩程度のものだったのだが、紅葉の山里は、ひんやりしたおだやかな空気がただよい、秋の様々な色や匂いで楽しませてくれた。
 地元、白山市には、かつての私鉄「金名線」の廃線跡地を利用した「手取キャニオンロード」というサイクリングコースがある。白山を源流とする手取川に沿って山間部を走るのだが、渓谷美で有名なことからこの名前がついたようだ。
 全長約20kmは平均してゆるやかな勾配なので、とくべつな体力を必要としない。冬場を除けば、3シーズン賑わっている、ときく。
 自転車との出会いは25年ほどまえだろうか。もちろん、はじめて出会ったのは幼少のころであるが、つまり、自転車が自分の趣味の道具となったときである。
 ちょうどマウンテンバイク(以下MTB)がブームになるころで、その斬新なアイデアとカッコよさに飛びついたのである。まあ、そういうアウトドア系の新しい物には弱かったのである。
 MTBの安定性と頑丈さは気に入っていたが、やはり使いこなすには、基本的に体力がものをいう。
 山登りの、登山口までのアプローチ手段として使ってみたことがあった。あのときは、荒廃した林道を延々10kmぐらい走った。道はズタズタに荒れていて、勾配もきつかった。
 登山口に着いたころにはヘトヘトに疲れていた。気合いを入れて登ったが、山頂近くで荒天につかまり、やむなく別のルートでエスケープした。
 登りに使用したルートは正規のコースではなかったので、戻ろうとしたときにルートを見失ったのである。疲労から、判断力が落ちていたのだろう。それで、まったく方向がちがうけれど、確実に下山できる正規のルートを下ったのである。
 初の試みはあえなく失敗し、あのMTBは結局、回収できなかった。しかし、家人から白い目でみられながらも新しいパートナーを手に入れ、以来乗りつづけてきた。
 でもあれに懲りて、山登りのアプローチに使うのはやめた。自転車でなけなしの体力を消耗してしまうからだ。
 じつは、この夏の終わりに新しい自転車を買った。多少MTB的な味付けはされているが、基本的には舗装道路を走るタイプだ。タイヤも細い。
 これがじつに快適なのである。ーーとなると、またぞろツーリング周辺Goodsがほしくなるのである。困ったことだ。
 キャニオンロードでも、ピチピチのウエアできめた人たちが颯爽と走り抜けていく。思わず道をよけてしまう自分に苦笑する。でも、あれは自分には似合わないだろうなぁ。(^_^;)
(photo:手取キャニオンロード)