日本人が迷う日本語

 外国人に日本語をおしえていて、ハタと悩むときがある。
 先日、テキストに「男の子」と「女の子」ということばが出てきた。もちろん一般的には「子ども」をさすことばだが、大人に対しても広く使われているので、おそらく、学習者が日本語に接する機会が多くなれば、あれ? と思うこともあるだろう。
 とくに「女の子」といういい方。かつてサラリーマンをしていたときに、会社内で日常的に飛びかっていた。
 「女の子はもう帰ったのかーー」「うちの女の子が持って行きますーー」「コピーは女の子にさせるからーー」……と、男子社員がいう。
 女子社員の名前や人格より「女の子」という記号が優先されていた。しかし、現れた「女の子」が年配のオバサンだったりしても、やはり「女の子」なのである。
 もしかして日本の会社は今もそうかもしれない。
 「ご主人」や「奥さん」という呼称も、堂々とおしえていいものか一瞬ちゅうちょする。でも、一般的に広く定着しているし、これに代わる適当な呼称もないのでしかたがない。
 「あなたの配偶者はお元気ですか」「お連れ合い様はいかがお過ごしですか」などとはいわないしなぁ。
 とくべつフェミニストではないけれど、まあようするに、たとえば男女同権意識に反することばがまだたくさん流通しているのである。
 「女(女性)◯◯」といういいかたもそうである。「女社長」「女弁護士」「女流作家」「女性議員」「女優」ーー。
 そういえば外国人に、「女優」って何? ときかれたこともあった。「女性の俳優」のことだよ、と答えておいたが、「女優」はあまり使わないように、といい添えた。「男優」に応用されても具合わるいしーー。
 会話例で、「お出かけですか?」というあいさつのことばがあった。今どきの近所づきあいでは、もうかなり廃れてきているのではないだろうか。と思いつつ、軽く紹介するにとどめた。(*_*)
(photo:姫路城にて)