半世紀という時間

 ビートルズがデビューして50周年らしい。
 中学生のころ、僕たちが『サムシング』を口ずさみ『カム・トゥゲザー』でシュッシュッしながら『ヘイ・ジュード』で踊り狂っているうちに、『レット・イット・ビー』で彼らは解散してしまった。
 あのころの日曜日といえば、昼さがりのテレビ番組だった『ロッテ歌のアルバム』や『NHKのど自慢』の醸し出すけだるい雰囲気を思い出す。
 あれは、休みの時間の終わりを告げるシグナルのような、そしてまた、子どもの生気をそぐような音だった。聞こえてくる演歌や素人の歌を「音」と記してしまっては、今どきしかられるかもしれないがーー。
 でも、そんな暗いトラウマのような心理から救ってくれたのがビートルズだった。いくぶん舶来志向があったとはいえ、彼らのカッコよさは頭抜けていた。
 以来当然のように、好む音楽は洋楽へと偏重していった。
 長じてからは、もちろん守備範囲も広がっていった。ついには、ネパールのガンダルバやモンゴルのホーミー、福建の南音まで聞いた。
 あまつさえ、カポエラカバディにまで手を出した。……いや、これはちがうな。
 一時はあんなに熱く燃えたのに……。出かけるときはいつもいっしょだったのに……。何をしていても頭からはなれなかった……。ーーそんな音楽はたくさんあった。
 しかし、ビートルズが発する輝きは時代を経ても色あせない。世に出した楽曲はもちろんのこと、ビートルズという「文化」が持つ普遍性におどろく。
 それはおそらく、メンバー4人の個性が際立っていてカブリがないことが、まずもっての成功要因だろう。そして、産み出す音楽のレベルの高さと革新性。
 別れてソロになってからも、それぞれに一家をなしていった。そのことからも、彼らの実力はうなずけるのである。
 ところで、ビートルズの「レコード版」を少し持っているが、再生する術をなくしてしまったことに気がついた。
 技術の発展はいいのだが、そのたびに新しいメディア版のアルバムを買うハメになってしまう。買わなきゃいいのかもしれないが、そうもいかないのが惚れた弱み。見事につけ込まれているんだなぁ。(;_;)
(photo:かつてのシングル版)